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コラム

独立社外取締役の有効活用に向けた実務上のポイント

シニアコンサルタント 

戦略リスクガバナンス部 後藤 一平(ごとう いっぺい)

ますます期待される独立社外取締役の機能発揮

 改訂コーポレートガバナンス・コード(CGC)は、取締役会の更なる機能発揮のため、原則4-8でプライム市場上場企業においては、独立社外取締役を3分の1以上選任することを求めています(必要な場合には、過半数の選任の検討を慫慂)。日本取締役会の直近の「上場企業のコーポレート・ガバナンス調査」によると、取締役会に占める独立取締役の比率(東証1部)について、過半数を占める上場企業は10%に満たないものの、3分の1を占めるという上場企業は、2018年の33.6%から急激に増加し、2021年には65.3%にまで達しています。(*1)

 独立社外取締役が3分の1以上を占める上場企業がいわば主流となっている昨今、多くの企業にとって、独立社外取締役の選任に伴う課題(質の高い候補者の探索・確保、多様性の確保など)を解決することも必要ですが、選任した独立社外取締役を「いかに有効活用していくか」がこれまで以上に重要になっているのではないでしょうか。

 独立社外取締役の有効活用に向けて、多くの企業では、議案に関する事前説明の充実化や、様々な情報提供の機会の創出などに取り組んでいますが、一部の実務担当者からは、「自身の専門分野や関心の高い分野に偏った発言が多い」という声が聞かれることもあります。

 そこで本コラムでは、今後ますます活躍の期待される独立社外取締役をより有効に活用するポイントについて考えてみたいと思います。

*1:日本取締役協会「上場企業のコーポレート・ガバナンス調査(2021)」(2021年8月1日)

 

ポイントは、独立社外取締役の期待役割の明確化と認識合わせ

 独立社外取締役をより有効に活用するポイントは、独立社外取締役の期待役割を明確化し、当該取締役と認識合わせを行うことだと考えます。具体的には、独立社外取締役に対して、①いかなる立場に配慮して、②いかなる観点で、③いかなる時間軸で監督してもらうか、をより明確にすることが有効です。

以下ではそれぞれについて企業の工夫例をご紹介します。 ① いかなる立場に配慮して 上場企業A: 「現場目線・業界視点に長けている社内取締役とは異なり、独立社外取締役に対しては外部ならではの視点での監督をお願いしています。例えば外部環境や外部ステークホルダーの期待等に配慮すると、検討不十分な論点はないかという視点で確認・提言してもらっています。」

② いかなる観点で 上場企業B: 「独立取締役に対しては、個別事案の妥当性に止まらず、全体を俯瞰して監督してもらうようお願いしています。例えば自社のパーパス、基本方針、事業ポートフォリオやM&A戦略などとの整合性について議論されているかという観点で、確認・提言をしてもらうことが大切だと考えます。」

③ いかなる時間軸で 上場企業C: 「独立取締役に対しては、短期ではなく、中長期的な視点での監督をお願いしています。例えば、中期経営計画の進捗状況に関する議論であれば、単年度の各KPIの達成状況の確認というより、3年後の目標達成に向けて前提条件や事業環境に大きな変化がないかなどの視点で検証いただいております。」

 

独立社外取締役の有効活用に向けて

 上記の有効活用のポイントについては、既に取締役会の実効性評価等を通じて課題として認識し、実践している企業が増えてきていることを実感しています。  日本のガバナンス改革において、独立社外取締役の期待役割がますます重要視される今こそ、これまで以上に質の向上に重きを置いて、自社の取組みを改善・強化されることを強く願っております。本コラムが多くの企業のオリジナルガバナンスの構築の一助となれば幸甚です。

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