Topics トピックス

コラム

知的財産投資に対するコーポレートガバナンス・コード改訂と、企業における知財ガバナンス活動について

フェロー
菊地 修(きくち おさむ)

 2021年6月11日付けで、コーポレートガバナンス・コード(以下「CGC」という)に、知的財産(以下「知財」という)投資に対する取締役会での監督とその情報開示に関する内容(以下「知財ガバナンス」という)(*1)が追加された。この追加は、日本経済新聞社渋谷編集委員や金沢工業大学杉光教授と共に、当方が日本企業の競争力を向上させるために一昨年から取り組んできた活動が、このような形で結実したことは感慨深い。

 そこで、当社では、この追加を受けて、早速2021年4月に「知財ガバナンス研究会」を発足し、「知財ガバナンス改革で、日本企業の競争力を向上させ、持続的な成長を実現し、日本の再興に貢献する。」を「志(パーパス)」(図1参照)とし、上場企業の知財責任者や、政府、大学、新聞社、弁護士、会計士、弁理士、知財情報サービサーの方々(約100社)と、研究や広報の活動(図2参照)を展開している。

図1

図2

 この活動では、今回のCGC改訂に追加された「知的財産」を、事業の競争力の源泉である「コア価値」と認識し、知財投資によって創出される新技術に対する発明やノウハウに留まらず、DXに象徴される経営体制や業務プロセスの改革を支えるソフトウェア、市場や顧客との関係を構築するデータベース、さらには、企業の信用が集積されたブランド等と、知的財産基本法に則して広く捉えている。

 今後は、これらの知的財産をいかに創出するか、すなわち新事業や研究開発のテーマ探索や、顧客・M&A・協業先等の候補調査、自社の業務プロセスやサプライチェーンの構築等の事業企画において、IPランドスケープ(*2)等を活用し市場の技術環境等の分析を行い、知財投資に対する経営判断を行うことになる。この経営判断にあたっては、取締役会が、経営資源の配分や事業ポートフォリオ戦略を考慮して、企業の持続的な成長に資するように監督することが今回のCGC改訂で追記されている。

そして経営判断がなされ知財投資が行われると、その執行プロセスで、知的財産部門は、知財創出を効果的に行うために情報提供や創造支援を行うと共に、創出された知的財産をその競争力を保護するために如何なる権利等で保護するかを考え、事業の持続的な成長に向けた知財の保護と活用戦略を着実に実行する必要がある(図3参照)。

図3

 このような知財投資を行った結果構築されたビジネスモデルについては、その事業の状況と共に、競争優位性等が知的財産で的確に保護され、どのような成果を得ているか等について統合報告書等で積極的に投資家等に開示し、投資家等は、この開示情報に基づき経営者と企業戦略に関する対話を実行していくことが期待されている。


【知財ガバナンス研究会のご紹介】
知財ガバナンス研究会では、上場企業が、知的財産投資を如何に実行すべきか?その実行をどのように執行や監督すべきか?さらにこれらの知財投資に関する情報をいかに開示すべきかについて、企業の知財関係者を結集して研究を行い、「チーム知財」として「日本企業の競争力を向上させる」活動を展開している。このような活動に参加頂ける方は、是非、以下サービスページをご確認の上、サービスページ上のお問合せフォームよりご連絡ください。

知財ガバナンス研究会のサービスページ

*1:CGCにおける知財ガバナンス関連原則
補充原則3-1③ 上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。
補充原則4-2② 取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、自社のサステナビリティを巡る取組みについて基本的な方針を策定すべきである。また、人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、これらをはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うべきである。

*2:IPランドスケープとは、企業戦略や事業活動において、知財情報を分析し活用する取り組みをいう。

 

kikuchi

フェロー
菊地 修(きくち おさむ)

トピックス一覧

PAGE TOP