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改訂コーポレートガバナンス・コードを支える3つの思想
プリンシパル 戦略リスクガバナンス部
村澤 竜一(むらさわ りゅういち)
難題が多い改訂コーポレートガバナンス・コード。見方を変えると、新たな成長へと進む局面になるともいえるでしょう。改訂コードの実践にあたって、忘れてはならない3つのポイントを整理します。
ガバナンス改革の焦点を押さえる
「取締役会」と「対話」。これが日本のコーポレートガバナンス改革の焦点です。2021年の改訂でも、「取締役会の機能発揮」が重視され、「ステークホルダーとの対話」の視点が多く含まれます。コーポレートガバナンスの根幹をなすのは取締役会です。日本企業の長期間の低収益性は、自己規律によるガバナンスの限界を物語っています。コーポレートガバナンス・コードが、自律を後押しする形で他律を取り込み、取締役会の実効性を高める。改訂コードでも、独立社外取締役に大きな期待を寄せています。
機関投資家による他律も、大きな焦点の1つです。投資家との「対話」を通じて、経営者を規律付け、企業価値を向上させる。コード改訂と同時に、「投資家と企業の対話ガイドライン」も改訂されました。株主・投資家といったステークホルダーの視点を考慮することは、ガバナンス改革の前提条件といえるでしょう。特に、新区分・プライム市場では、多くの機関投資家との対話を中心に据えて成長にコミットすることが想定されています。
価値創造する経営者のリスクテイクを支える
しかし、他律に頼るだけでは改革は進みません。今日のガバナンス改革の特徴は、政府の成長戦略の一環として、「攻めのガバナンス」に重点が置かれている点です。経営陣の役割は、環境の変化を感知し、機会を捉え、企業価値を創造すること。常に変化する環境に自社を適合させ、大胆な変革によって持続的な競争優位が得られるよう進化する。これが攻めのガバナンスです。
「攻めのガバナンス」が叫ばれてきた背景には、資本生産性の低さがあります。結果として企業価値の向上も進んでいませんでした。それは、経営陣が適切なリスクを取らなかった(取れなかった)ことが起因しています。改訂コードでも、経営陣のリスクテイクを支える環境の整備が強調されました。そして、独立社外取締役には「他社での経営経験を有する者を含めるべき」なのです。
ブレない哲学を「エクスプレイン」する
すべてコンプライすることが目的ではありません。新たなコードは、社会の変化を織り込み、残されてきた課題も含まれるため、難問が多いのは事実です。本来コーポレートガバナンスは、組織の目的やビジョンに基づき、自社に即した枠組みが多様に選択され、ステークホルダーとの対話を通じて高められてゆくものです。コンプライしない場合は、自社のコーポレートガバナンスに対する哲学を「エクスプレイン」する絶好の機会です。
忘れてはならない3つの思想。ブレない哲学が、難題を解決し、新たな成長を支えます。今回の改訂で、いよいよ自社に適合したオリジナルなガバナンスを追求すべき時が到来したといえるでしょう。
プリンシパル 戦略リスクガバナンス部
村澤 竜一(むらさわ りゅういち)