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コラム

サステナビリティ・ガバナンスについて②

HRガバナンス・リーダーズ プリンシパル
神山 直樹(こうやま なおき)

UNEP FIの提唱したIntegrated Governance

 前回のコラムの最後で、キケローの言葉がUNEP FI(国連環境計画 金融イニシアティブ:United Nations Environment Programme Finance Initiative)の提唱した考えに繋がると書きました。これはUNEP FIが2014年に出した”Integrated Governance – A new model of governance for sustainability”の中で提唱されたものです(下図参照)。

 ここでいう「Integrated Governance」とは文字通り「統合ガバナンス」ということですが、企業のサステナビリティ課題が企業のガバナンスに完全に統合されている状態を指しており、長期的にそれらサステナビリティ課題を解決することが、企業価値を創出し企業を取り巻くステークホルダーに利益をもたらすというものです。
 このサステナビリティ・ガバナンス体制構築に至るステップについては「サステナビリティ・ガバナンス改革」(日本経済新聞出版)第8章「日本版サステナビリティ・ガバナンスの構築(155ページ)」でも取り上げました。

監督サイド、執行サイドにおけるサステナビリティ

 日本においてもサステナビリティ委員会の設置が増えてきていますが、その多くは執行サイドの委員会となっています(下図参照)。UNEP FIの「統合ガバナンス」実現に至る過程としては、監督サイド、つまり取締役会の傘下の委員会(以下、監督サイドについては、サステナビリティ・ガバナンス委員会という)の設置が有効であるとされています。しかし欧米企業と比較して、日本企業においてはサステナビリティ・ガバナンス委員会の設置はまだ少ない状況です。

 前回のコラムでも述べたように、キケローの言葉から紐解いたサステナビリティ・ガバナンスの要諦は、「取締役会という審議体による統治」です。
 また2021年以降の実際の動きとして、CGコード、ICGNグローバル・ガバナンス原則、さらに最近の記憶に新しいところでは「企業内容等の開示に関する内閣府令」いわゆる開示府令においても、サステナビリティに関する開示の充実(と、開示するに値する社内体制の整備・構築)や、取締役会の関わり方について明言されることが多くなってきました。日本企業の多くが、アドバイザリー型の取締役会の形であるBoard1.0から、社外取締役を中心としたモニタリング型の取締役会であるBoard2.0への移行期にあり、サステナビリティに関する領域においてもモニタリング型への移行の途上にあります(Board1.0からBoard2.0、さらにBoard3.0の話は弊社村澤によるコラムも参照)。これらの観点からも、取締役会の傘下にサステナビリティ課題に対応できる委員会が必要ということになってきます。

監督サイド、サステナビリティ・ガバナンス委員会の設置が鍵となる

 下図に示すように、今後のサステナビリティ・ガバナンスの鍵は、サステナビリティ・ガバナンス委員会の設置となります。
 企業において、監査、指名、報酬等と並んでサステナビリティ課題への対応が重要性を増している現在、取締役会にサステナビリティ課題が恒常的に挙がるガバナンス体制の構築を目指すことが急務です。近年、日本においてもサステナビリティ・ガバナンス委員会を設置する企業が少しずつ増えて来ています。

 一方、新たな課題として、「どのようにして、現有の執行サイドのサステナビリティ委員会を活かしつつ、監督サイドにも委員会を設置し、サステナビリティ・ガバナンス体制を構築していけば良いのか」や、「そもそも執行サイドにサステナビリティ委員会を設置するにはどうすればよいのか」という問いが生まれてきます。
 次回の本コラムでは、これらに焦点を当てて論を進めて行きたいと考えています。


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