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ニュースリリース

「2022年指名・報酬ガバナンスサーベイ」結果公表
コーポレート・ガバナンス改革は形式から実質へと進化・深化!!
人的資本経営では企業価値向上への経営・人財戦略の統合が課題!!

HRガバナンス・リーダーズ株式会社(代表取締役社長 CEO 内ヶ﨑 茂、 以下「HRGL」)は、この度「2022年指名・報酬ガバナンスサーベイ」を実施しましたので、その結果概要を公表いたします。

本サーベイは企業のコーポレート・ガバナンスの要諦となる指名・報酬双方の領域を本格的にカバーした日本初のサーベイで、今年度も大企業やプライム市場上場企業を中心に300社を超える企業にご参加いただきました。今年度は指名領域にサーベイを拡大後2年目となり、日本企業の取組みの進展も明らかになってきました。

エグゼクティブ・サマリー

  • 指名委員会の年間開催回数・時間について、開催回数が4回以上の企業の割合は56.9%(前年比11.8ポイント増)、8時間以上開催している企業の割合は22.5%(同9.4ポイント増)と増加傾向にある。審議事項としては、「選解任基準の策定・見直し」「人材要件定義・スキルマトリックス」「次期社長・CEOの決定」「後継者計画」が増加しており、ガバナンスにおいて必要最低限の「形式」を整える議論の段階から、運用面で「実質」を備える段階へと、同委員会の運営の高度化が進んでいる。
  • 人的資本経営の実践において体制づくりと開示は一体で議論される必要があるが、体制づくりにおいては「経営戦略と人財戦略の連動」の実効性向上が課題であり、開示においては企業価値向上に関する事項の充実が課題となっている。
  • 直近3年間における社長の総報酬額(中央値)の推移では概ね増加の傾向がみられた。最も伸びが大きかったのは時価総額1兆円以上の企業群で、1億9,500万円(前年比30.7%増)であった。この要因の1つに変動報酬比率の上昇が考えられる。また、同企業群においては社外取締役の総報酬額(中央値)は1,700万円(2020年比で13.3%増)となった。
  • 昨年と比較し、インセンティブ制度において非財務指標をKPIとして採用する企業が増加している。特に中長期インセンティブにおいてその傾向が顕著である。採用が多かった指標には、E(環境)関連において「温室効果ガス関連」、S(社会)関連において「従業員満足度関連」等が挙げられる。

今回の結果について、HRGLのコンサルタントは以下のように述べています。

プリンシパル 指名・人財ガバナンス部 見城大輔
「指名領域においては、昨年のコーポレートガバナンス・コード改訂などを受けスキルマトリックス策定など『形式』が一定程度整い、『実質』を意識して指名委員会の運営が高度化されつつあります。後継者計画に関する仕組みの整備から候補者育成等の本質的な議論が始まっており、委員会の開催頻度や開催時間も拡張しています。社外への説明責任を果たしていくという意味でも委員会の果たす役割がより幅広くなっています。人財開発委員会などの部門横断の会議体設置が後継者計画のコントロールに有効とされてきましたが、近年は人的資本経営を強化する観点でも設置ニーズが高まっています。企業価値向上を念頭に、経営戦略と連動した人財戦略を経営会議や取締役会レベルで議論する必要があります。」

プリンシパル 指名・報酬ガバナンス部 鈴木啓介
「報酬領域においては、社長の報酬水準及び構成の変化がみられました。コロナ禍の影響もあったと考えられる2020年以降の報酬金額の伸びが著しく、その要因は変動報酬の割合の増加に起因しています。特に時価総額1兆円以上の企業群では欧州企業並みの変動報酬の割合となっています。また、中長期インセンティブ制度において非財務指標を報酬KPIとして採用する企業の割合は年々増加してきましたが、今年は特に顕著な伸びが確認されました。企業のパーパスやマテリアリティに対する議論・取組みを、サステナビリティ委員会や報酬委員会等での審議を通じて経営者報酬の設計に落とし込む動きが加速しているものとみられます。報酬委員会の運営では、審議事項数の増加に加え、定性評価やピアグループの選定、クローバック・マルス条項の設定が審議対象となるケースが増えています。フォーミュラベースでの報酬決定の議論にとどまらず、経営者の役割やミッション、テーマ評価等の要素も丁寧に織り込んだ審議が行われているものと捉えています。」

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指名領域サマリー
1.指名委員会

■指名委員会の活動状況

指名委員会の年間開催回数・時間をみると、開催回数が4回以上の企業の割合は56.9%(前年比11.8ポイント増)となっており、8時間以上開催している企業の割合は22.5%(同9.4ポイント増)と増加傾向にある(図1、2)。

図1 指名委員会の年間開催回数
※N:160社

図2 指名委員会の年間開催時間
※N:160社

■指名委員会での審議事項

直近2年連続で指名領域のサーベイに参加した193社をみると、90.7%(前年比51.3ポイント増)の企業がスキルマトリックスを作成済である(図3)。また、指名委員会において「人財要件定義・スキルマトリックス」や「次期社長・CEOの決定」を審議している企業は6割超となっている(図4)。コーポレートガバナンス・コード改訂等を背景に「形式」が整う中、「実質」を意識して指名委員会運営の高度化が進んでいる。他方で「本来審議すべき事項」との差を見ると、「後継者計画」「選解任基準」「指名ポリシーの策定・開示」「コンテンジェンシープランの策定・見直し」「指名委員会の実効性評価の実施」において差が大きくなっており、今後こうした議論が進むことが期待される。

図3 スキルマトリックスの作成状況
N : 193社

図4 指名委員会での審議事項、および本来審議すべきと思われる事項
※N:225社

図4の指名委員会における審議事項を指名委員会の開催回数で分けた企業群でみると、4回以上の企業群では「選解任基準の策定・見直し」「人材要件定義・スキルマトリックス」といった割合が高くなるとともに議論が後継者計画に及ぶなど、運用面でより「実質」の議論が増える傾向にある(表1)。

表1 指名委員会の開催回数と審議事項
※N:225社

2. 人的資本経営とその開示
■経営戦略と人財戦略の連動

人材版伊藤レポートで掲げられている経営戦略と人材戦略の連動について、本サーベイ参加企業の具体的な取組状況をみると、経営戦略上で重要な人材アジェンダを特定する企業や、人材戦略の目線を反映する企業は30%程度となっている(図5①)。およそ60%の企業が目指すべき人材像を定義できていると回答した一方、その目指すべき人材像に紐づく育成施策や採用施策を打ち出せている企業はそれぞれ約20%、約40%となっている(同②)。また、人的資本経営の実効性を担保するために重要となる指標(KPI)の設定状況をみると、経営戦略上目指すべき将来の姿に関するKPIの設定とモニタリングを行っている企業は35%となっている(同③)。

図5 経営戦略と人材戦略の連動に関する具体的な取り組み
※N: 240社

■人的資本の開示

本サーベイ参加企業における人的資本の開示状況をISO30414基準*の各種領域に合わせて確認すると、「コンプライアンスと倫理」「健康経営」といったリスクマネジメントに関する領域での開示が進む一方、「リーダーシップ」「生産性」「スキルと能力」といった企業価値向上に関する領域での開示では「開示できる取り組みが現時点で無い」がいずれも理由の最多であった(図6)。
*人的資本に特化した世界初の国際フレームワーク(2018年12月公表)

図6 ISO30414の11領域で開示していない項目とその理由
※N: 240社

報酬領域サマリー
1.報酬水準
■社長の報酬

直近3年間連続して本サーベイに参加している企業群において、2022年の社長の総報酬額(中央値)は8,093万円であった。時価総額別(「1,000億円未満」、「1,000億円以上5,000億円未満」、「5,000億円以上1兆円未満」、「1兆円以上」の4つの企業群)の推移をみると、概ね報酬額は増加の傾向を示した(図7)。特に「1兆円以上」の企業群では1億9,500万円となっており、前年比30.7%と大きく増加した。

報酬額が増加した要因の1つに、報酬ミックスにおける変動報酬比率の上昇が考えられる。総報酬額に対する変動報酬額(短期インセンティブと中長期インセンティブの和)の比率をみると、「1兆円以上」の企業群においては直近3年間で19ポイントと大きく増加しており、それ以外の時価総額の企業群においても比率は概ね上昇していた(図8)。

図7 社長 総報酬額(時価総額別)
※N: 249社

図8 社長 変動報酬比率(時価総額別)
※N:249社

■社外取締役の報酬

直近3年間連続して本サーベイに参加している企業群において、2022年の社外取締役の総報酬(中央値)は1,018万円であった。社長と同様、社外取締役の総報酬額(中央値)の時価総額別での3年間の推移をみると、「1兆円以上」の企業群は2022年には1,700万円(2020年から2022年にかけ13.3%増)という結果が示された(図9)。ガバナンスの強化として社外取締役の役割が増大していることに伴い、報酬水準の見直しが進んでいると考えられる。他方で、「1,000億円未満」、「1,000億円以上5,000億円未満」の企業群には明確な傾向はみられず、「5,000億円以上1兆円未満」の企業群では2年連続微増であった。

図9 社外取締役 総報酬額(時価総額別)
※N: 249社

2.インセンティブ報酬のKPI
■非財務KPIの採用状況

昨年と比較し、非財務指標を報酬制度のKPIとして採用する企業が大幅に増加している。特に中長期インセンティブにおいてその傾向が顕著に見られた。直近2年連続で報酬領域のサーベイに参加した280社をみると、短期インセンティブ報酬制度において非財務KPIを採用している企業数*は、取締役を対象とした制度で39社(前年比14社増)、執行役員・執行役を対象とした制度で43社(同18社増)であった一方、中長期インセンティブ報酬制度においては、取締役を対象とした制度で58社(同34社増)、執行役員・執行役を対象とした制度で52社(同31社増)であった(図10、11)。採用が多かった指標には、E(環境)指標「温室効果ガス関連」、S(社会)指標「従業員満足度関連)」等が挙げられる。

*採用企業の定義:2021年、2022年で役員報酬の評価で使用する指標として以下のいずれかを採用していると回答した社数
2021年:環境関連指標、CSR・人権関連指標、コーポレートブランド関連指標、リスク関連指標、安全性関連指標、従業員関連指標、顧客・消費者関連指標、取引先関連指標
2022年:E指標(温室効果ガス関連)、E指標(その他(自由記載)) 、S指標(顧客満足度関連) 、S指標(安全性関連) S指標(ダイバーシティ&インクルージョン関連)、S指標(従業員満足度関連)、S指標(その他(自由記載))、G指標(リスクマネジメント関連)、G指標(コンプライアンス関連)、G指標(その他(自由記載))、サステナビリティ全般(ESG、SDGs等)外部評価指標(FTSE、MSCI等)、その他(DX・イノベーション関連、事業・経営戦略全般 等)

図10 インセンティブ制度における非財務KPI採用企業数 取締役

図11 インセンティブ制度における非財務KPI採用企業数 執行役員・執行役
※N:280社

3. 報酬委員会
■報酬委員会の活動状況

直近2年連続で「報酬委員会を設置している」と回答した企業237社をみると、報酬委員会の開催回数の平均値は4.5回(前年比0.3回増)、合計開催時間の平均値は5.2時間(同0.1時間減)であった(表2)。

表2 報酬委員会の活動状況
※N: 237社

■報酬委員会での審議事項

報酬委員会における審議事項について、前年比での割合が増えた項目は「報酬額を決定するための算定式(フォーミュラ)」(10.6ポイント増)、「定性評価」(10.1ポイント増)、「ピアグループの選定」(9.7ポイント増)、「クローバック・マルス条項の設定」(9.7ポイント増)等であった(図12)。報酬制度や水準により客観性を持たせるための審議が増加している傾向がわかる。

図12 報酬委員会における審議・決議事項
※N: 237社

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サーベイ概要
サーベイ期間:2022年6月~2022年8月
参加企業数:報酬領域:319社、指名領域:240社
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HRGL主催セミナー「2022年指名・報酬ガバナンスサーベイ結果報告会 指名・報酬ガバナンスの最新潮流」

HRGLでは、上記の内容も含めた詳細について、2022年10月7日に「2022年指名・報酬ガバナンスサーベイ結果報告会」を開催します。本セミナーにご参加希望の方はこちらからお申込みください(アーカイブ視聴あり)。
https://www.hrgl.jp/info/info-6504/

「指名・報酬ガバナンスサーベイ」について

「指名・報酬ガバナンスサーベイ」は、企業のコーポレート・ガバナンスの要諦となる指名・報酬双方の領域を本格的にカバーした日本で初めてのサーベイです。経営者を含む役員の報酬調査に加え、指名・報酬委員会の運営からスキルマトリックス、後継者計画、社外取締役の選任など、日本企業のプラクティスについての最新情報を提供し、貴社のガバナンスの向上を強力にサポートします。

現在、通常スケジュール後のご参加(レイト参加)も募集しておりますので、お気軽にお問合せください。
https://www.hrgl.jp/service/compensationgovernance/compensationsurvey/

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