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将来財務指標のKPI採用企業は6割超と大幅増、 サステナブルな企業価値向上を促す報酬ガバナンス改革が進展
~日経225社(2024年6月末時点)役員報酬調査の結果公表~

 HRガバナンス・リーダーズ株式会社(代表取締役社長 CEO 内ヶ﨑 茂、 以下 「HRGL」)は、日本企業の役員報酬に関する調査を行いましたので、調査結果を公表いたします。

【調査実施目的】

  • わが国においてコーポレートガバナンス改革の流れが加速している状況を踏まえ、上場企業が今後の役員報酬制度の設計や開示内容を検討するための視座を提供する

【主な調査結果】

  • 報酬ミックスの平均値は基本報酬:短期インセンティブ(STI):中長期インセンティブ(LTI)=46:29:26であった。総報酬に対して基本報酬の占める割合は減少し、STI、LTIの占める割合は増加した結果、昨年に続き変動報酬(STIとLTIの合計)の割合が50%を超えた
  • 業績評価指標について、STIでは営業利益の採用数が最も多かった。LTIでは株主資本利益率(ROE)の採用数が最も多く、また、株主総利回り(TSR)の採用数と合わせて昨年同様に増加傾向がみられた
  • 業績評価指標に将来財務指標を採用する企業の割合は、STIで37.8%、LTIで37.3%であった
  • 社外取締役に株式報酬を導入する企業の割合は10.2%であった
  • STI、LTIへのクローバック条項の導入を開示している企業の割合はそれぞれ19.6%、41.8%であり、それぞれ昨年から6.7pt、8.9ptと大きく増加した

<2024年 日経225社報酬調査 概要>

【調査対象】

  • 2024年6月末時点での日経225社(日経平均株価算出の対象となる225銘柄)
    ※経年分析においては、2022年6月末、2023年6月末時点での同構成銘柄と比較。

【調査方法】

  • 有価証券報告書内での対象事業年度の役員報酬に関する記載を調査。

■報酬ミックスの構成

 2024年の日経225社において報酬ミックスを開示している企業は81.3%であり、昨年と同様の割合でした(図表1)。また、そのうち基本報酬、短期インセンティブ(STI)、中長期インセンティブ(LTI)の3つの基準割合を記載している企業を対象に報酬ミックスの平均値を算出したところ、基本報酬:STI:LTI=46:29:26でした(図表2)。昨年調査に続き本年も総報酬に占める変動報酬(STI、LTI)の比率が50%を上回りました。

(図表1)報酬ミックスの開示企業の割合

(図表2)報酬ミックスの平均

※2022年:N=125、2023年:N=134、2024:N=138(各報酬要素の基準割合を記載している企業数)

■日経225社における役員報酬の業績評価指標の採用状況

①財務指標の採用状況
 STI・LTIで採用されている財務指標を調査しました。STIについては、2022年、2023年に続き、上位に利益、売上高といった収益性指標が採用される結果となりました(図表3)。また、ROE(株主資本利益率)はわずかながら昨年よりも増加しました。
 LTIについて、例年の特徴として収益性指標だけでなく効率性指標である株主資本利益率(ROE)や株主価値を表す指標である株主総利回り(TSR)がより多く採用されています。特にTSRの採用数は一昨年比で2倍弱(昨年からは約1.2倍)の増加となりました(図表4)。

(図表3)STIの業績評価指標における財務指標の採用件数(上位5種類)

(図表4)LTIの業績評価指標における財務指標の採用件数(上位5種類)

※同一指標であっても、連結、単体、担当領域等でそれぞれ集計して合算しているため、同一企業が同一指標内で複数回計上されているケースがある。

②将来財務指標の採用状況
 役員報酬の業績評価指標に将来財務指標を導入する企業の割合は、STIで37.8%、LTIで37.3%であり、それぞれ昨年から6.2pt、7.1ptと大きく増加しました。特にLTIでは2022年比では17.3%から37.3%へと採用割合が倍増していました。(図表5)。
 その内訳をE/S/G(Environment(環境)/Social(社会)/Governance(企業統治))の領域別にみると、STIではGHG排出量などのE指標および品質・安全性や従業員エンゲージメントなどのS指標が、LTIではGHG排出量などのE指標を採用する企業がそれぞれ最も増加していることがわかります(図表6)

(図表5)将来財務指標の採用割合(STI・LTI別)

(図表6)領域別 将来財務指標採用割合(STI・LTI別)

※「ESG」はE/S/G全領域を横断する将来財務指標。「その他」はE/S/Gいずれの領域にも該当しない将来財務指標

■クローバック条項の導入開示状況

 重大な法令・社内規則違反や財務情報の訂正、自社の評価・企業価値を著しく毀損させる行為に対して、報酬の全部または一部の返還を求める規定をクローバック条項といいます。STIに同条項を導入している企業の割合は19.6%であり、昨年の12.9%から6.7ptの伸びを見せました。LTIにおいて、クローバック条項の導入を開示している企業の割合は41.8%であり、昨年から8.9pt増加しています(図表7)。

(図表7)STIおよびLTIにおけるクローバック条項の導入開示状況

■社外取締役への株式報酬の導入状況

 近年、社外取締役をはじめとした監督側の役員への株式報酬の是非についても議論される機会が多くなっています。調査対象企業のうち、社外取締役に対して株式報酬を導入している企業の割合は10.2%と昨年比1.8pt増加しました。(図表8)。

(図表8)社外取締役への株式報酬の導入状況

 本調査の結果について、HRGL代表取締役社長 CEO 内ヶ﨑 茂は次のように述べています。「昨年の調査において確認できた、日本企業の役員報酬制度の内容に①将来財務指標を組み込んでサステナブルな企業価値向上に向けたインセンティブを設ける動きや、②株主価値を表す指標であるTSRをLTIに活用することで資本市場の評価を反映させるアクションの広がりといった傾向は今年の調査においても継続しており、このトレンドは当面継続するものと思われる。経営陣の不正防止などを通じて適切なリスクテイクを促す仕組みである、クローバック条項の導入開示企業も引き続き増加していることも同様である。2024年は株式報酬に関し「インサイダー取引規制に関するQ&A」の改正などもあり、また将来的な会社法改正の議論においては、自社株式無償交付の対象を従業員等に拡大に関する論点もある。今回の分析結果を参考に、今後の日本企業の役員報酬制度とその開示をめぐる議論の活発化や、各社の企業理念や経営戦略、マテリアリティ(重要課題)の解決に向けた取組みを経営者の報酬体系へ、さらには意識的に従業員へも波及させる仕組みを反映した報酬制度設計が加速することに期待したい。最後に、経営者報酬における更なる課題として、①アニマルスピリット経営を実現するための報酬戦略、②経営チーム強化のための報酬戦略、③中期経営計画を廃止してTSRやROICを中心として資本市場との対話、④CEO・CFO・CHROが中心となる事業・人財戦略の強化、⑤自己株式を活用した人財投資等が挙げられる。」

 HRGLは、今後も強靭な取締役会を起点としたサステナビリティ経営の実現に向けて、クライアント企業の多様なニーズにお応えし、企業の成長ストーリーをともに描く、コーポレートガバナンスの“かかりつけ医”としての役割を担ってまいります。

【HRガバナンス・リーダーズ株式会社 概要】
設 立 :2020年4月(事業開始:2020年10月)
所在地 :〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-4-5
代表者 :代表取締役社長 CEO 内ヶ﨑 茂
事業内容:サステナビリティガバナンスコンサルティング
     ボードガバナンスコンサルティング
     指名・人財・報酬ガバナンスコンサルティング
     サステナビリティ経営・人的資本経営コンサルティング
     上記コンサルティングに関する商品開発および調査研究・オピニオン発信
     信託代理店業務
URL :https://www.hrgl.jp/

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