日経 225 社の経営者報酬制度を巡る最新動向
サステナビリティ経営・資本コスト経営を推進するインセンティブが高まっている
-
コーポレート
ガバナンス Corporate
Governance - 指名・人財 Nomination/HR
- 報酬 Compensation
- サステナビリティ Sustainability
HR ガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント
朝田 悠人
HR ガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント
小沢 潤子
■ サマリー
日経 225 社(日経平均株価算出の対象となる 225 銘柄)の各社の有価証券報告書における経営者報酬関連の記載事項について調査したところ、ピアグループの定義を開示している企業の割合は 39.1%と 2022 年から 2.2%pt 増加。その定義を開示している企業のうち、国内企業の同規模・同業種の両方を使用している企業の割合は 46.6%と最多であり、海外企業をピアグループに設定している企業の割合は 14.8%と相応にあった
報酬ミックスを開示している企業の割合は 81.3%であり、2022 年から 4.9%pt 増加。報酬ミックスの平均は、「基本報酬:短期インセンティブ(STI):中長期インセンティブ(LTI)=48:28:23」であり、本年初めて、変動報酬(STI と LTI の合計)の割合が過半数を超えた
KPI について、STI では利益、売上高といった収益性指標の採用が上位であった。LTI では、収益性指標に加え、効率性指標である株主資本利益率(ROE)や企業価値を表す指標である株主総利回り(TSR)がより多く採用されており、特に TSR の採用件数は 2022 年から大幅に増加していた
将来財務指標1を用いた KPI は STI と LTI の双方で増加傾向にある。特に STI では S 関連の指標、LTI では E 関連の指標の採用が増加している。そのウェイトについて、STI では「0%超10%以下」、LTI では「10%超 20%以下」の企業が最も多い
STI におけるクローバック条項の導入を開示している企業の割合は 12.9%。また、LTI における当該クローバック条項の導入開示企業の割合は 32.9%であり、増加傾向にある
社外取締役への株式報酬の導入を開示している企業の割合は 8.5%、従業員への株式報酬の導入を開示している企業の割合は 17.8%であり、2022 年から微増となった
今回の調査から、報酬制度が持続的な企業価値向上を促すよう変化しつつあること、KPI に資本コスト経営、サステナビリティ経営に関連した指標の採用が増加していることが窺えた
1 中長期的な視野に基づき自社の成長戦略と社会課題の解決を整合させた、足元の財務には反映されないが、将来的な財務に影響すると考えられる価値ある指標
1.はじめに
昨今、わが国のコーポレートガバナンスに関する改革が進む中、経営者報酬制度はその一
翼を担っています。2022 年 7 月に改訂された「コーポレート・ガバナンス・システムに関す
る実務指針(CGS ガイドライン)」では、経営者報酬について、特にグローバル企業の場
合は、業績目標へのコミットや株主目線での経営姿勢を明らかにするため、長期インセンテ
ィブ報酬比率の引上げを行うことや、非財務指標を採用する場合には、経営戦略・経営計画
を踏まえた議論を十分に行い、指標の選択理由や企業価値との関係性について、透明性の高
い開示を実施することなどが期待されています。加えて、幹部候補人材の育成・エンゲージ
メント向上の観点から自社株報酬や持株会の活用、監督側の社外取締役の取締役会の一員と
しての当事者意識を高めるインセンティブを付与する観点から、自社株報酬の活用が有効で
あると整理されています。また、2023 年 1 月の「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改
正では、有価証券報告書等における取締役会、指名委員会・報酬委員会等の開催頻度、具体
的な検討内容、委員の出席状況といった活動状況の開示が求められるようになり、委員会の
透明性の確保が期待されています。
足元の状況を踏まえ今回 HRGL では、2023 年 6 月末時点での日経 225 社(日経平均株価
算出の対象となる 225 銘柄)を対象に、各社の有価">
Opinion Leaderオピニオン・リーダー
HR ガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント
朝田 悠人 Yuko Asada

HR ガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント
小沢 潤子 Junko Ozawa
