欧米企業の経営者報酬制度の最新動向と日本企業の現在地
将来財務KPI の採用が国内外企業で進んでいる
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コーポレート
ガバナンス Corporate
Governance - 指名・人財 Nomination/HR
- 報酬 Compensation
- サステナビリティ Sustainability
HRガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント
朝田悠人
■ サマリー
国内外企業における将来財務KPI(非財務KPI)の採用状況をSTI(Short Term Incentive:短期インセンティブ) 、LTI(Long Term Incentive:中長期インセンティブ)別に確認したところ、いずれも各国で採用が前年から進んでいた。日本企業における採用割合については、STI で7%pt、LTI で3%pt 増加している
欧米企業においては、E/S/G の 3 領域の中では、S 領域の指標について、経営者報酬 KPI への採用が進んでいる。経年で比較すると、STI・LTI の双方で「GHG 排出量関連」「エネルギー関連」などの E 領域の指標の採用が進んでいた。また業績連動報酬に占める将来財務 KPI のウェイトを確認すると、STI・LTI の双方において日本企業で約 2 割、欧米企業で約 3-4 割程度であった
財務 KPI について、日本企業では STI・LTI の双方で営業利益や売上高、純利益、資本効率などの指標の採用が多いほか、LTI においては株主を意識した指標である TSR (株主総利回り)の採用が比較的多い。欧米企業については、STI では売上高、営業利益、キャッシュフローが、LTIでは EPS や資本効率性指標、TSR がより多く採用されている
資本効率性指標を KPI に採用する場合、日本企業においては、ROE をはじめとした自己資本を分母とする指標を採用する傾向にある。一方で欧米企業は、ROIC や ROCE など、投下資本全体を考慮して資本効率性を評価する指標の採用が主流となっている
欧米企業において、クローバック条項を導入している企業の割合は STI・LTI の双方で 9 割以上を占めていた。一方で、日本企業における採用割合は STI で 15%、LTI で 35%にとどまっていた。この背景には、当該条項に関する欧米諸国の公的機関からの要請があると考えられる。従業員株式制度の導入状況について、欧米企業では各国で 9 割程度の企業が従業員株式制度を導入しているが、日本企業の導入割合は 25%にとどまっており、大きく水をあけられている
※ 本稿の調査分析対象企業は、以下の通りである。
1.将来財務KPI 採用状況
1-1 将来財務KPIの採用割合
各国で将来財務KPIの採用が進んでいる
将来財務KPI(非財務KPI)と経営者報酬の紐づけに関する議論は、各方面で加速しています。改訂作業が進められているコーポレートガバナンスに関する国際的な基準であるG20/OECDコーポレートガバナンス原則では、経営者報酬においてサステナビリティ指標を用いることは、投資家の視点から肯定的に捉えられる旨が記される見込みとなっています。また日本においても、ESG版伊藤レポートや人材版伊藤レポート2.0においてESGに関する指標および人材に関する指標をKPIに用いることの意義について示されています。
今回、TOPIX100構成企業、および米英独時価総額上位の企業(米国 100 社、英国 100 社、独 40社)につき、経営者報酬における将来財務KPI の採用状況を調査しました(図表1,2)。国内外企業における採用状況をSTI(Short Term Incentive:短期インセンティブ) 、LTI(Long Term Incentive:中長期インセンティブ)別に確認したところ、各国で将来財務KPIの採用が前年から進んでいることがわかります。日本企業における採用割合については、STIで7%pt、LTIで3%pt増加しています。STI・LTIの双方で最も採用割合が大きいのは英国であり、STIでの採用割合">
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