HRガバナンス・リーダーズ株式会社

 

英国コーポレートガバナンス・コードの改訂案が日本企業にもたらす示唆

日本企業のコーポレートガバナンス改革に3 つの示唆をもたらす

  • Sustainability
  • Nomination
    Compensation/HR
  • Strategy/Risk
  • Corporate
    Governance

HR ガバナンス・リーダーズ株式会社
シニアストラテジスト

中川和哉

■ サマリー

2023 年5 月、英国財務報告評議会(FRC)は、コーポレートガバナンス・コードの改訂案を公表した。2015 年に制定された日本のコーポレートガバナンス・コードは、コンプライ・オア・エクスプレインのアプローチを採用した点をはじめ、多くの点において英国のコーポレートガバナンス・コードを参考にしている

今回の英国のコーポレートガバナンス・コードの改訂案の内容は、日本企業のコーポレートガバナンスのあり方を再考するうえで、3 つの注目すべきポイントがあると考える。
1 つ目は、サステナビリティ事項を含む非財務情報のモニタリングが、監査委員会における役割として要請されている点である。従来から認識されている財務面だけでなくサステナビリティの側面からもリスクを捉え、それらを監査する考え方は英国だけでなく、将来的に日本でも普及すると考える
2つ目は、役員報酬の返還を定めるクローバック・マルス条項の透明性改善が要請されている点である。日本のクローバック条項の導入比率は、HRGL の指名・報酬ガバナンスサーベイ参加企業 339 社のうち 27.7%にとどまり、大企業の 9 割程度がクローバック条項を導入する英米と比較して、低い水準にとどまる。一方、英国ではクローバック・マルス条項の発動条件(トリガー条項)を明瞭にするよう求めるなど、透明性改善に向けて一歩進んだ議論が行われている。その他、役員報酬の方針として成果に比例し、業績不振には報いないことなども求めている
3 つ目は、取締役および上級管理職の後継者計画や任命について、多様性の促進を含めた形でポリシーの有効性や監督体制に関する情報開示の促進を促している点である。日本政府は 2023年 6 月に女性版骨太の方針を決定し、プライム市場の企業に対して 2030 年までに女性役員比率を 30%以上とする目標も盛り込まれた。女性役員の定義として、取締役、監査役に加えて、執行役員なども含むという閣僚の発言や報道も出ており、英国と同様、上級管理職も含めた形での多様性を意識した後継者計画策定への関心が、日本でもさらに高まると予想する。多様性という軸を通した後継者計画の策定と人財戦略の連携が、さらに求められると考える

1.英国コーポレートガバナンス・コードの改訂案が公表される

特に「監査・リスク・内部統制」に焦点をあてて改訂が行われている

2023 年 5 月、英国財務報告評議会(FRC)は、英国のコーポレートガバナンス・コードの改訂案を公表しました。2015 年に制定された日本のコーポレートガバナンス・コードは、コンプライ・オア・エクスプレインのアプローチの採用をはじめ、多くの点において英国のコーポレートガバナンス・コードを参考にしています。英国のコーポレートガバナンス・コードの動向を知ることは、今後の国内におけるコーポレートガバナンスの動向を予測するうえで、参考にできる部分があると考えます。なお、英国のコーポレートガバナンス・コードが最後に改訂されたのは 2018 年にまで遡り、直近は 2021 年に改訂された日本のコ ードと比較して期間が空いています。
英国のコーポレートガバナンス・コードは、①取締役会のリーダーシップと企業のパーパ
ス、②責任の分担、③構成・サクセッション・評価、④監査・リスク・内部統制、⑤報酬という 5 つのパートに分かれます(図表 1)。今回、特に重点的に改訂が行われたのは Section 4の「監査・リスク・内部統制」のパートになります。重点的に改訂が行われた背景には、大手建設会社であるカリリオン社の経営破綻をはじめ大企業の不祥事が相次ぎ、監査やコーポレートガバナンスに関する問題提起がなされた">

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Opinion Leader

HR ガバナンス・リーダーズ株式会社
シニアストラテジスト

Kazuya Nakagawa

SBI ホールディングスにてESG 対応を含めたIR・広報業務を経験後、2015 年三菱UFJ モルガン・スタンレー証券に入社。株式ストラテジストとしてESG、株式需給の領域の調査を
担当。ESG の領域では、日本企業のガバナンスや株主総会の動向、国内及び海外企業のサプライチェーンにおけるESG の取り組み、国内外のESG ファンドの動向などについてレポートを執筆。日経新聞をはじめ、メディアへの掲載多数。2019 年4 月より三菱UFJ 信託銀行に出向、HR 戦略コンサルティング部の一員として、コーポレートガバナンス、サステ
ナビリティ領域の調査業務を担当。2020 年10 月よりHR ガバナンス・リーダーズ入社

CORPORATE
STATEMENT

新しい未来へのストーリーを。

ひとりを輝かせることが、
企業を、社会を、そして世界を
輝かせることにつながる。
そう信じている、だから。
志ある企業が、未来にわたって輝き続けるための
持続可能な企業経営の、力となること。
それが、私たち HRガバナンス・リーダーズの
使命です。
ひとりひとりを、それぞれの組織を、強くし、
有機的につなぐ、
サステナビリティガバナンスで。
企業の新しい未来への、ストーリーを創る。
ビジョンを強く実行し続ける在りかたへと、
変えていく。
日本を動かし、世界を変えていく人たちの、力へ。
未来を生み出す力の、力へ。
アイデアと、経験と、知識と、情熱を、
その想いへと、全力で注ぎ込みながら。
ずっとずっと続く道をともに創り、歩み続けます。
一緒に地球を輝かせていく、
そう、仲間となって。