HRガバナンス・リーダーズ株式会社

 

企業の取締役会レベルにおける人権課題に対する説明責任

人権の取組みに関するガバナンス体制の構築が求められる

  • Sustainability
  • Nomination
    Compensation/HR
  • Strategy/Risk
  • Corporate
    Governance

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
アナリスト

池田 葵

■ サマリー

OECD多国籍企業行動指針の改訂やEUにおける企業持続可能性デューディリジェンス指令案の検討、企業サステナビリティ報告指令の施行等、国際的にビジネスと人権に関連する規制や指針が強化されている。

企業が人権尊重の責任を果たすために、取締役会や経営トップであるCEOのコミットメントと人権課題に対する説明責任を果たすことが重要である。

人権課題に対する社内のガバナンス体制を構築し、取締役会が説明責任を果たすために必要な要素として、①トップのコミットメント、②人権尊重の取組みや人権デューディリジェンス(以下、人権DD)の監督、③人権尊重の企業文化の構築、④透明性と報告が挙げられる。

TOPIX100の構成企業を対象に、取締役会における議論内容の開示状況を各種報告書類において調査した結果、サステナビリティやESGを審議内容にリストアップしている企業は半数にのぼるが、個別のトピックとして人権を取り上げている企業は1割に留まる。

統合報告書をはじめとする任意の開示報告書において、4割弱の企業が人権の取組みに関して取締役会の監督を受けている、又は人権の取組みを推進する委員会の監督を取締役会が担っている旨について開示を実施している結果となった。

企業には、人権課題を取締役会が経営の重要課題として議論し、定期的に人権DD等の取組みに対して取締役会レベルの監督を行うガバナンス体制の構築することが求められる。同時に、これらの取組みを対外的にステークホルダーへ発信し、取締役会の説明責任を果たすことも今後の日本企業の人権対応において期待される。

1.   はじめに~ビジネスと人権関連の規制・指針のアップデート~

企業が取り組むサステナビリティ課題のなかで、国際的な指針・規制の策定や改訂が進む「ビジネスと人権」の分野に注目が集まっています。

 2023年6月には、人権を含め、多国籍企業に期待される責任ある行動について定めた「OECD多国籍企業行動指針」が12年ぶりに改訂されました。同時に「OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針」と名称変更も行われました。今回の改訂において、気候変動と生物多様性に関する国際的に合意された目標とガイドラインを整合させるための推奨事項、データ収集・利用を含む技術分野におけるデューディリジェンス実施への期待等が新たに追記されました。人権については、人権デューディリジェンス(以下、人権DDという)実施における対象範囲拡大(Tier2以降を含む)や、人権侵害のリスクが高まる可能性がある個人に対する負の影響に対して人権DDの強化を求める内容になっています(図表1)。

 EUで制定に向けた議論が進められている「企業持続可能性デューディリジェンス指令案」も、OECDの指針と整合性を合わせたものとする方向で調整が行われています。また、2023年1月には「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」が発行され、対象となる企業の規模により異なるが2024年1月以降の事業年度から欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)に基づいてサステナビリティ情報の開示が義務化さ">

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参考文献

  • 1 国際連合 (2011),「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP:UN Guiding Principles on Business and Human Rights)」, https://www.ohchr.org/sites/default/files/documents/publications/guidingprinciplesbusinesshr_en.pdf
  • 2 OECD (2023), 「OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針(OECD Guidelines for Multinational Enterprises on Responsible Business Conduct)」, https://www.oecd-ilibrary.org/finance-and-investment/oecd-guidelines-for-multinational-enterprises-on-responsible-business-conduct_81f92357-en
  • 3 World Benchmarking Alliance(2021), “The Methodology for the 2022-2023 Corporate Human Rights Benchmark”, https://www.worldbenchmarkingalliance.org/research/the-methodology-for-the-2022-corporate-human-rights-benchmark/
  • 4 UN Working Group on Business and Human Rights (2021), 「ビジネスと人権の次の10年に向けたロードマップ (UNGPs 10+ a roadmap for the next decade of business and human rights)」, https://www.ohchr.org/sites/default/files/2021-12/ungps10plusroadmap.pdf
  • 5 Global Compact Network Germany (2021), “What does effective human rights risk management look like? 5 insights from practice”, https://www.globalcompact.de/fileadmin/user_upload/Dokumente_PDFs/DGCN_Insights_Series_HRDD_Risk_management.pdf

Opinion Leader

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
アナリスト

Aoi Ikeda

Linnaeus University ビジネス経済学部学士課程修了。サステナビリティ先進国のスウェーデンでビジネスを通じた持続可能な社会の実現を学び、「Greenwashingに対する消費者の倫理的な認識」に関する研究に取り組む。現職では、サステナビリティ・ガバナンス領域の複数のリサーチ業務に携わっている。

CORPORATE
STATEMENT

新しい未来へのストーリーを。

ひとりを輝かせることが、
企業を、社会を、そして世界を
輝かせることにつながる。
そう信じている、だから。
志ある企業が、未来にわたって輝き続けるための
持続可能な企業経営の、力となること。
それが、私たち HRガバナンス・リーダーズの
使命です。
ひとりひとりを、それぞれの組織を、強くし、
有機的につなぐ、
サステナビリティガバナンスで。
企業の新しい未来への、ストーリーを創る。
ビジョンを強く実行し続ける在りかたへと、
変えていく。
日本を動かし、世界を変えていく人たちの、力へ。
未来を生み出す力の、力へ。
アイデアと、経験と、知識と、情熱を、
その想いへと、全力で注ぎ込みながら。
ずっとずっと続く道をともに創り、歩み続けます。
一緒に地球を輝かせていく、
そう、仲間となって。