PRI in Person 2023で注目すべき機関投資家動向
Commitments to actionの時代に入り、責任ある機関投資家が求めることとは
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コーポレート
ガバナンス Corporate
Governance - 指名・人財 Nomination/HR
- 報酬 Compensation
- サステナビリティ Sustainability
HRガバナンス・リーダーズ株式会社 シニアマネージャー
水谷 晶
HRガバナンス・リーダーズ株式会社 コンサルタント
三上 諒子
■ サマリー
2023年10月3日~5日、PRI(責任投資原則、Principle for Responsible Investment)の年次カンファレンスである「PRI in Person 2023」が東京で開催された。今回のメインテーマは「Moving from commitments to action(誓約から行動へ)」であった。直面するサステナビリティ課題の解決やその機会を活用する実践的なガイダンスを中心に、機関投資家等の有識者による講演やパネルディスカッションが活発に行われた。
上記がメインテーマとなった背景には、様々なサステナビリティ課題が不可逆的に拡大しており、全てのステークホルダーによる早急な対応が求められていることがある。それゆえ、一部の企業や投資家等が取り組む限定的な対応では追いつかず、全てのステークホルダーを巻き込む様々な対応が必要となる。整備が進んだサステナビリティ情報開示の基盤のもとで機関投資家が行動を起こすべき機は既に熟しており、カウンターパートにあたる企業側のサステナビリティ課題への対応も待ったなしの状況にある。
公正な移行に関するテーマでは、実現するための多国間の協力、移行計画の実施に向けた包摂的なエンゲージメントの重要性および課題感について議論されていた。ネットゼロ達成に向けた気候変動と自然資本に対する取組みの推進では、ガイドラインを超えた開示を行う企業もあり、気候変動と自然との関係が明確になり相互の影響や依存関係の分析が進めば、取組みの優先順位付けも変わってくるとの考えが述べられていた。そして、ESG批判はウクライナ侵攻やエネルギー危機、物価上昇といった社会情勢を背景に顕在化した人々の目先の不安にも対処する公正な移行計画の実践が重視されているとも考えられ、建設的な見方をすれば、本気でESG課題に取り組む主体を判別できる機会ともなる。
サステナビリティ課題は人口動態や地政学リスクと関係しており、現在の地理的な境界線が必ずしもサステナビリティ関連の課題や世界で起きている事象の線引きに合っていない可能性がある。多国間の協力、あらゆるステークホルダーの関与がより一層重要となり、機関投資家は俯瞰的に世界のサステナビリティ課題を捉え、解決策を見出していく必要があり、企業がそのような機関投資家の要請に応えていくためには、まずは国際的に策定が進められる各種基準に沿った情報開示の対応を進めることが必要となる。
1. はじめに
~PRI in Person 2023 の全体概要~
Japan Weeksのメインイベントとして日本政府の期待が高い
PRI(責任投資原則、Principle for Responsible Investment)の年次カンファレンスである「PRI in Person 2023」が、2023年10月3日~5日の3日間、東京のグランドプリンスホテル新高輪にある国際館パミールをメイン会場として開催され、国内外から42か国、1,300人以上の関係者が集まった。PRIは、2006年当時の国際連合事務総長であるコフィー・アナン氏が金融業界に対して提唱したイニシアチブであり、機関投資家の意思決定プロセスにESG課題を受託者責任の範囲内で反映させるべきとした世界共通のガイドライン的な性格を持つ。今回は15回目にして日本で初めての開催となり、岸田首相や小池東京都知事などの著名な日本政府関係者が来賓として講演するなど、国内外の責任投資家への日本政府の期待の高さを示すものとなった。
特に日本政府は、この3日間を含む2023年9月25日から10月6日を「Japan Weeks」とし、海外のアセットオーナーや資産運用会社等を集中的に日本に招致、日本の金融資本市場としての魅力や政府の取組み等のイベントを発信してきた。こうした動きは、日本の国際金融センターの実現に向けた取組みを前進させるとと">
Opinion Leaderオピニオン・リーダー
HRガバナンス・リーダーズ株式会社 シニアマネージャー
水谷 晶 Akira Mizutani

HRガバナンス・リーダーズ株式会社 コンサルタント
三上 諒子 Ryoko Mikami
