TOPIX100 構成企業における取締役会傘下の専門委員会の現況
サステナビリティ委員会、リスク委員会、ガバナンス委員会を中心に解説する
-
コーポレート
ガバナンス Corporate
Governance - 指名・人財 Nomination/HR
- 報酬 Compensation
- サステナビリティ Sustainability
HRガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント
朝田 悠人
■ サマリー
2023 年1 月31 日、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正が金融庁から公表され、対象となる上場企業は「サステナビリティ」「人的資本」「コーポレートガバナンス」に関する取組みの開示が要求されている。「コーポレートガバナンス」については、取締役会、指名委員会、報酬委員会の活動状況(開催頻度、具体的な検討内容、個々の取締役又は委員の出席状況等)について記載が求められるほか、その他の専門委員会の活動状況についても、記載を省略可能であると記されているものの、実際には記載しているケースが多い
取締役会の傘下に専門委員会を設置するケースは、欧米企業において相応に存在する。2023 年9 月に改訂されたG20/OECD コーポレートガバナンス原則においても、専門委員会の設置については、取締役会のニーズに応じて柔軟に設置されるべきであると示されている
TOPIX100 構成企業の中で2023 年3 月31 日以降に決算期を迎えた企業81 社(2023 年6 月30日時点)のうち、専門委員会を設置している企業の割合は31%と、おおよそ3 社に1 社の割合であった。「サステナビリティ委員会」「リスク委員会」「ガバナンス委員会」が多く設置されている。開催頻度は平均4-5 回/年であり、おおよそ四半期に1 回のペースで開催されている
各委員会の具体的な検討内容をみると、サステナビリティ委員会は自社のマテリアリティの特定や気候変動、GHG 排出量について、リスク委員会は全社におけるリスク許容度や、経営上重大なリスクの選定について、ガバナンス委員会は取締役会における実効性評価や、自社のガバナンス体制のあり方について議論しているケースが多い
専門委員会の設置の検討にあたっては、自社のマテリアリティ(重要課題)に沿ったアジェンダを議論できる場にすること、執行側、監督側のいずれに設置するか、指名委員会、報酬委員会、監査(等)委員会(監査役会)との関係性のあり方が重要な論点であると考える
取締役会における人的資本経営の基本方針の策定および経営陣の部門横断での取組みの推進にあたり、人材開発等の人的資本に関する専門委員会を必要に応じて設置することも、有効な選択肢であると考える
1.はじめに
2023 年 1 月 31 日、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正が金融庁から公表さ
れました。この改正は 2023 年 3 月 31 日以降の決算期を対象とする有価証券報告書から適用
が開始され、対象となる上場企業は「サステナビリティ」「人的資本」「コーポレートガバ
ナンス」に関する取組みの開示が要求されます。「コーポレートガバナンス」については、
取締役会、指名委員会、報酬委員会について活動状況(開催頻度、具体的な検討内容、個々
の取締役又は委員の出席状況等)を開示することを求めています。それ以外の企業統治に関
して提出会社が任意に設置する委員会その他これに類するもの(以下「専門委員会」)の活
動状況については、「記載を省略することができる」と定められているものの、実際には記
載している企業が多くみられています。
取締役会の傘下に専門委員会を設置するケースは、欧米企業において相応に存在します。
Spencer Stuart の調査によると、取締役会の諮問委員会を 4 つ以上、すなわち指名委員会、
報酬委員会、監査委員会以外の専門委員会を設置している企業の割合は米国、英国でそれぞ
れ 70%、62%に達しています。欧米企業において、取締役会傘下に専門委員会を設置するこ
とは比較的スタンダードな取組みであると考えられます。また、2023 年 9 月に改訂された
G2">
Opinion Leaderオピニオン・リーダー
HRガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント
朝田 悠人 Yuto Asada
