東証が要請する「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の留意事項および日本企業に求められるアクション
自社のPBR の水準に依らず資本コストや株価を意識した取組みが求められている
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コーポレート
ガバナンス Corporate
Governance - 指名・人財 Nomination/HR
- 報酬 Compensation
- サステナビリティ Sustainability
HRガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント
朝田悠人
■ サマリー
東京証券取引所(以下「東証」)は2023 年3 月末、プライム市場・スタンダード市場の全上場企業を対象に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を、プライム市場の全上場企業を対象に「株主との対話の推進と開示」を要請している
10 月26 日に東証は「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて」について、本要請の趣旨・留意点について再周知を行っている。また、対応を進めている企業の状況を投資家に周知し、企業の取組みを後押しする観点から、開示企業の一覧表を2024 年1 月15 日に公表開始する予定である
要請の趣旨・留意点は大きく2 つある。1 つ目は、本要請の対象企業について、PBR 水準に関わらず、取組みを推進することを求めている。2 つ目はCG 報告書内での「【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】」というキーワードの記載の徹底であり、本要請に関する取組みの段階や英文での開示の有無に応じて「(検討中)」や「【英文開示有り】」という文言を追記することを求めている
2024 年1 月以降に公表予定である、投資者の目線を踏まえた対応ポイントについては、機関投資家協働対話フォーラムが10 月3 日に公表したエンゲージメント・アジェンダ「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた投資家との対話のお願い」が投資家側の目線として、現時点では参考になりうる。企業価値の向上に向けたストーリーおよびそこで投資家に説明すべき項目について、企業に求める事項を整理している
今後日本企業においては、「自社のPBR 水準に関わらない、ROIC 経営・資本コスト経営の深化を通じた事業ポートフォリオ改革の検討」「ROIC 経営・資本コスト経営を適切にモニタリングするコーポレートガバナンス体制の構築」が重要になるだろう
1.はじめに
東京証券取引所(以下「東証」)は2023年3月末、プライム市場・スタンダード市場の全上場企業を対象に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を、プライム市場の全上場企業を対象に「株主との対話の推進と開示」を要請しました。各要請については、具体的な開示時期の定めはないものの、できる限り速やかな対応を求めています。また、開示を行っている旨やその閲覧方法について、コーポレートガバナンス報告書の「コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示」の記載欄への記載を求めています。
東証は、3月期決算企業における、6月総会後に提出するコーポレートガバナンス報告書でのこれらの要請に関する開示状況について注視しました。10月11日に実施されたフォローアップ会議では、短期間でプライム市場上場企業の3割の企業が取組みを進めていることをポジティブに捉えているものの、PBRが1倍を上回っている企業で開示率が低いことを課題として示しています。10月26日に東証は「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて」について、本要請の趣旨・留意点について再周知を行っています(図表1)。また、対応を進めている企業の状況を投資家に周知し、企業の取組みを後押しする観点から、開示企業の一覧表を来年1月15日に公表開始し、毎月1回更新予定であることを示しています。
なお、「株主との対話の推進と開示」については、今後順次投資家に向けて本要請の趣旨を周知するとともに、年明けには企業の取組みの好事例および投">
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