「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム」の要点
収益性・成長性とサステナビリティを両立した経営が求められる
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コーポレート
ガバナンス Corporate
Governance - 指名・人財 Nomination/HR
- 報酬 Compensation
- サステナビリティ Sustainability
HR ガバナンス・リーダーズ株式会社
シニアストラテジスト
中川和哉
■ サマリー
2023 年 4 月、金融庁は「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラ
ム 」を公表した。今回のアクション・プログラムは、東証が 2023 年 3 月に公表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」などの要請や、有価証券報告書等の記載事項の変更を定めた 2023 年 1 月の改正開示府令の内容なども踏まえて、策定されている
アクション・プログラムでは「企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けた課
題」、「企業と投資家との対話に係る課題」という2つの大きな括りが示され、前者は 3 つ、後者は 5 つの具体的な課題が列挙されている。前者の「企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けた課題」において最も重要なポイントは、事業ポートフォリオの見直しなど収益性・成長性を意識した経営とサステナビリティを意識した経営の両立が求められている点であると考える。また、独立社外取締役の機能発揮が具体的な課題として掲げられており、取締役会、委員会の実効性向上を通じて、収益性・成長性とサステナビリティを両立する企業経営をモニタリングするガバナンス体制の構築を後押しする内容であると解釈できる。後者の「企業と投資家との対話に係る課題」については、➀スチュワードシップ活動の実質化、②対話の基礎となる情報開示の充実、③グローバル投資家との対話促進、④法制度上の課題の解決、⑤ 市場環境上の課題の解決、という 5 つの具体的な課題が指摘されている。③については、プライム市場における英文開示の義務化を含め、英文開示の更なる拡充を図る方針が示されている
企業は、今回の内容を受けて、➀ROIC 経営の導入を通じた事業ポートフォリオ改革の検討、
② 開示にとどまらないサステナビリティの取組み推進、③事業ポートフォリオ改革を含む経営戦略の実践およびサステナビリティの取組みをモニタリングするガバナンス体制の構築、という 3 つのアクションを検討する価値があると考える。③については、各種取組みを監督するための委員会や会議体を設置すること、また執行側にとどまらず取締役会傘下に委員会を設置することも有力な選択肢になり得る。そうしたモニタリング体制の構築は、コーポレートガバナンス改革の実質化にも寄与すると考える
1.金融庁が公表したアクション・プログラムの概要
1-1 企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けた課題
収益性・成長性とサステナビリティの両立が経営において求められる
2023 年 4 月、金融庁は「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プ
ログラム」を公表しました。2023 年 3 月には、東京証券取引所(東証)からプライム・スタンダードの上場企業に対して「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」、さらにプライム上場企業には「株主との対話の推進の開示」などが要請されました。今回、金融庁が公表したアクション・プログラムは、2023 年 3 月の東証の要請をはじめ、有価証券報告書等の記載事項の変更を定めた 2023 年 1 月の改正開示府令の内容なども踏まえて、策定されています。
内容を紐解くと、今回のアクション・プログラムでは「企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けた課題」、「企業と投資家との対話に係る課題」という2つの大きな括りが示され、前者については 3 つ、後者については 5 つの具体的な課題が列挙されています。前者において最も重要なポイントは、事業ポートフォリオの見直しなど収益性・成長性を意識した経営とサステナビリティを意識した経営の両立が求められている点であると考えます(図表 1)。これまでもコーポレートガバナンス・コードなどで、収益性">
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