国内外のインパクト投資にかかる動向
ESG 投資と似て非なるインパクト投資による資金獲得を目指すために
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Governance - 指名・人財 Nomination/HR
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HRガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント
大杉 陽
HRガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント
三上諒子
■ サマリー
インパクト投資の世界的な規模を概観すると、組織数の規模では「アメリカ・カナダ」の運用機関数が全体の半数を占め、運用規模では「西・北・南ヨーロッパ」の運用機関の資産運用残高が5 割を超えていた。国内のインパクト投資にかかる運用規模は、2021 年度時点で13,204億円(推計)となっており、概ね右肩上がりで上昇してきている。
インパクト投資の考え方は複数あるが、財務的リターンに加えて「意図的にインパクトを創出すること」を目的としている点は共通する。加えて、組織によってはインパクト測定や広範なアセットクラスによる投資などの要件を満たすものをインパクト投資と解釈している
ESG 投資は、従来の財務情報に考慮事項としての非財務情報を加える形に拡張したもので、投資成果の把握は引き続き財務的なリターンに集約されると解釈することもできる。一方で、インパクト投資では財務的リターンとは別に、社会・環境へのインパクトを把握して投資判断を行う。財務的リターンと区別してインパクトの創出を企図することにより、投資家はその企業・事業に対する投資でより直接的で好ましいインパクトの創出を期待できる。
インパクト評価はインパクト投資の重要な構成要素の一つである。投資家および企業が利用できるインパクト評価はあらゆる手段で実施されてきたが、近年は特に様々な団体からフレームワークが公表されている。企業のインパクト評価においては、社内マネジメントや意思決定で活用するか、外部とのエンゲージメントで活用するか等、目的に応じた評価手法でインパクト評価を実施すると良いと考えられる。
「インパクト」という新しい対話軸の登場は、企業の投資家に対する説明内容および投資家の企業に対する問いかけの変化のきっかけとなり得るのではないか。今後拡大が見込まれるインパクト投資マネーを自社に呼び込むことを企業が望むならば、従来のIR 活動における開示・説明内容の枠組みに加えて、自社のインパクトを把握し合理的に投資家へ開示・説明することについてもその中身を検討する必要性が次第に高まっていくと予想される。
1.インパクト投資を取り巻く国内外の動向
世界で展開されるインパクト投資、我が国では金融庁が検討会を設置
昨今、インパクト投資が注目を集めています。インパクト投資を推進すべく米国で立ち上げられた団体「GIIN(Global Impact Investing Network)」が2022年に公表したレポート※1によると、インパクト投資の運用資産残高はグローバルで約1.16兆ドル(2021年12月時点の推計)、インパクト投資に関与する組織体は3,300に上っています。インパクト投資が注目されるようになった背景には、人口問題、貧困問題、犯罪テロ、高齢化、気候変動に起因する問題等の深刻な社会課題に対して、企業が社会や環境にプラスの影響を与えながら事業価値を高めていくことへの期待が高まっていること、などが挙げられます。
国内でも、グローバル規模でのインパクト投資拡大に対応するため、金融庁が「インパクト投資等に関する検討会」を令和4年10月に設置しました。社会・環境課題の解決やスタートアップを含む新たな事業の創出に資するインパクト投資等の拡大に向けた方策についての議論が行われています。同検討会は、インパクト投資の国内における普及・拡大に向けて、インパクト投資の基本的意義、投資の要件、推進のための施策等を取り纏めた報告書を6月に公表する予定です。そして、事業評価に関するデータ整備や人材育成等を促進するために、投資家と企">
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大杉 陽 Akira Oosug

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