HRガバナンス・リーダーズ株式会社

 

金融庁 「インパクト投資等に関する検討会報告書」の解説

基本的指針となる 4 つの要件とインパクト投資のさらなる拡大に向けたコンソーシアムの設立

  • Sustainability
  • Nomination
    Compensation/HR
  • Strategy/Risk
  • Corporate
    Governance

HR ガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント

三上諒子

HR ガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント

大杉 陽

■ サマリー

2023 年 6 月末、金融庁のウェブサイトにおいて「インパクト投資等に関する検討会報告書」及びその概要が公表された報告書は、2022 年 10 月にサステナブルファイナンス有識者会議の傘下に設置されたインパクト投資等に関する検討会が「インパクト投資」の基本的意義等について議論した成果を取り纏めたものである。報告書では、ESG 投資ではカバーしきれない領域に焦点を当てるサステナブルファイナンスの1分野として、インパクト投資を推進する意義に言及している 

ESG 投資で課題とされていた「個別の投資が、実際にどの程度国内外の課題解決に資する具体的な技術の実装やビジネスモデルの変革等につながっているか、明確には確認しづらい」という点に対して、インパクト投資ではインパクトの可視化を通じてその解決度合いが理解しやすいと考えられる

対象とするインパクト投資の射程範囲は「投資を通じて実現する社会・環境的効果と収益双方が明確である投資」である。報告書では、インパクト投資が満たすべき要件として、①実現を「意図」する「社会・環境的効果」や「収益性」が明確であること、②実施により、追加的な効果が見込まれること、③効果の「特定・測定・管理」を行うこと、④市場や顧客に変化をもたらし又は加速し得る新規性等を支援すること、の 4 つの基本的指針案を提示している。指針案については 10 月 10 日まで意見募集が行われ、市中協議・対話を通じてブラッシュアップされていく見込みである

今後発足されるコンソーシアムを通じ各論点に関する議論などを経てインパクト投資が普及するにつれ、企業が自社の創出する経済的価値と社会的価値(インパクト)を可視化し、投資家をはじめとするステークホルダーに訴求する動きが加速される可能性がある。自社が社会に及ぼすインパクトを可視化し価値創造ストーリーを筋道立てて語ることで、これまで拡大をみせてきた ESG 投資家に加えインパクト投資家を惹きつける可能性が考えられる。インパクト投資の普及は、企業にとって追加的なサステナブル資金の調達手段となり得ると考える

1. インパクト投資等に関する検討会報告書」6月末に公表

昨年 10 月発足の検討会が6月に報告書を公表

2023 年 6 月末に、金融庁のウェブサイトにおいて「インパクト投資等に関する検討会報告書」及び「インパクト投資等に関する検討会報告書概要」が公表※1されました。2022 年 10月に金融庁は「国内外のインパクト投資等の動向・事例を参照しつつ、金融機関や投資家がインパクト投資等の取り組みを行う際に有用な実務的な留意点等も含め、社会・環境課題の解決やスタートアップを含む新たな事業の創出に資するインパクト投資等の拡大に向けた方策について議論を行う」との目的で、東京大学大学院経済学研究科の柳川範之教授を座長、高崎経済大学の水口剛学長を副座長とし、サステナブルファイナンス有識者会議のもとに「インパクト投資等に関する検討会」を設置しました。検討会は「インパクト投資」の基本的意義等について議論を進めてきた成果として、当報告書を取り纏めています。本稿ではこの内容の一部をピックアップしつつ、今後の方向性について確認していきたいと思います。

社会・環境課題解決の手段としてのインパクト投資にかかる期待

報告書の冒頭では「脱炭素や少子高齢化、災害への対応など、社会・環境課題の重要性が急速に高まっている。課題解決には、これに貢献する技術の実装やビジネ">

会員登録頂きますと、
全文を閲覧することが可能となります。

すでに会員登録されている方はこちらからログインしてください。

Opinion Leader

HR ガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント

Ryoko Mikami

大阪市立大学商学部卒。外資系監査法人サステナビリティ合同会社でのインターンシップでは、海外のサステナビリティ先進企業のケーススタディや企業のサステナビリティ推進室の立ち上げ支援に従事。その後、IT 関連のベンチャー企業にて企業が社会に与えるインパクトの測定・評価に関するリサーチを行う。サステナビリティに関連する情報発信やインパクト評価のフレームワーク開発に従事。2021 年 7 月に HR ガバナンス・リーダーズ入社、現在に至る。本職の傍ら、FP(ファイナンシャル・プランナー)として記事の執筆活動を行う。消費者のサステナビリティに対する意識を喚起し、購買行動や個人の投資活動に影響を与えたい。

HR ガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント

Akira Oosugi

大学(経済学科)での専攻は国際人的資源管理。卒業後、複数企業の経理・財務を経験。在籍した物流企業では拠点の移転プロジェクトに係る採用、労務・関連施設管理等にも従事。以後、外資系証券会社のコーポレート・アクセス部門での勤務や IR・SR コンサルティング会社在籍期間にわたり企業と機関投資家とのコミュニケーションに関する業務(ミーティングのアレンジやリサーチ業務)に従事したのち、当社入社

CORPORATE
STATEMENT

新しい未来へのストーリーを。

ひとりを輝かせることが、
企業を、社会を、そして世界を
輝かせることにつながる。
そう信じている、だから。
志ある企業が、未来にわたって輝き続けるための
持続可能な企業経営の、力となること。
それが、私たち HRガバナンス・リーダーズの
使命です。
ひとりひとりを、それぞれの組織を、強くし、
有機的につなぐ、
サステナビリティガバナンスで。
企業の新しい未来への、ストーリーを創る。
ビジョンを強く実行し続ける在りかたへと、
変えていく。
日本を動かし、世界を変えていく人たちの、力へ。
未来を生み出す力の、力へ。
アイデアと、経験と、知識と、情熱を、
その想いへと、全力で注ぎ込みながら。
ずっとずっと続く道をともに創り、歩み続けます。
一緒に地球を輝かせていく、
そう、仲間となって。