TIFD・TSFD 統合から見える社会関連の情報開示枠組みの動向
今後S(社会)領域の情報開示基準の策定が国際的に進む
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コーポレート
ガバナンス Corporate
Governance - 指名・人財 Nomination/HR
- 報酬 Compensation
- サステナビリティ Sustainability
HRガバナンス・リーダーズ株式会社
アナリスト
池田 葵
■ サマリー
2017 年に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が公表した TCFD 提言の 4 つの柱と呼ばれる 4 つの開示項目(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)は、国内外の多くの情報開示フレームワークの基礎になっている。2021 年に設立された自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)も、TCFD 提言を参考にしながら自然関連の情報開示フレームワークを開発しており、2023 年3月に最終草案を発表した
また、ESG の S(社会)に係る領域においては、不平等関連財務情報開示タスクフォース(TIFD)と社会関連財務情報開示タスクフォース(TSFD)の統合が 2023 年4月に発表された。統合される社会関連の情報開示タスクフォースは、TCFD、TNFD との整合性を考慮した社会関連情報開示の枠組みの開発を進めると公表している
社会関連の情報開示の枠組み開発を進めているのは TIFD、TSFD だけではない。欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)は人権や人的資本に関する開示項目を定めているほか、国際的なサステナビリティ開示基準を策定している ISSB は今後基準を開発するテーマの候補に人的資本、人権を挙げている。社会関連の開示フレームワークや報告基準の開発が進む背景には、投資家をはじめとしたステークホルダーが適切な意思決定を行う上で、社会関連の情報が必要不可欠になっているためであろう
はじめに
投資家や消費者を筆頭にステークホルダーからの要請や規制強化によって、気候変動や人権などをはじめとするサステナビリティ課題へのさらなる取組みが、企業に求められています。同時に、サステナビリティに関する企業の取組みを対外的に開示していく上で、ステークホルダーの意思決定に適切に働きかけることができる透明性のある情報開示が求められています。
すでに環境領域においては、※1気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)や※2自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)といった気候変動や生物多様性などのタスクフォースが立ち上げられ、企業などにおける情報開示が推進されています。
環境領域における情報開示タスクフォースに加えて、最近では、ESG の S(社会)に係る情報開示の重要性も注視されています。たとえば、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)において、要求される開示項目の大きな柱の一つとして社会領域が位置付けられています。さらに ESRS は外部が企業に与える影響(財務的マテリアリティ)と、企業が外部に与える影響(影響マテリアリティ)の両方をみるダブル・マテリアリティを中心的な論点に置いています。こうした動きに加えて、不平等関連財務情報開示タスクフォース(TIFD)と社会関連財務情報開示タスクフォース(TSFD)の統合が 2023 年4月に発表されました。本稿では、TIFD と TSFD の統合の目的と、社会(S)領域の情報開示の今後の潮流を説明します。
">Opinion Leaderオピニオン・リーダー
HRガバナンス・リーダーズ株式会社
アナリスト
池田 葵 Aoi Ikeda
