有価証券報告書による人的資本開示の現況
TOPIX100 社の調査から、日本企業の人的資本開示の現況を分析する
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コーポレート
ガバナンス Corporate
Governance - 指名・人財 Nomination/HR
- 報酬 Compensation
- サステナビリティ Sustainability
HR ガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント
小沢 潤子
■ サマリー
TOPIX100 の構成企業のうち、2023 年 1 月の企業内容等の開示に関する内閣府令の改正が適用された 2023 年3月 31 日以降に終了する事業年度の有価証券報告書を調査時点で発行する81 社を対象に、人的資本と多様性の開示状況を調査した
女性管理職比率などの開示義務 3 指標の連結ベースの開示は一部企業にとどまる。連結ベースでの開示については、投資者に対する有用な情報提供の観点から必要であり、今後、開示に向けて課題を解決していく必要があると考える
人的資本全般の議論に特化した会議体を設置している企業は 16.0%。人材版伊藤レポート 2.0では、CHRO の設置とともに全社的経営課題の抽出を最も重要なステップと位置付け、経営ト ップと人財戦略の責任者を中心に議論を行うことが求められている。この議論を定期的に創出する仕組みの一つとして、人的資本全般の議論に特化した会議体の設置を推奨する
経営戦略と人財戦略の連動に向けた具体的施策の推進は道半ば。2020 年に初めて人材版伊藤 レ ポートが公表されて3年が経ち、人的資本経営の重要性・必要性については理解している企業は増えてきているものの、その具体的な施策、特に「As is -to be ギャップ」の定量把握については、取組み・開示に至っている企業はごく一部の企業であった。今後、経営戦略に連動する人財戦略について、ギャップを埋めるための施策の立案、実施、モニタリングを行うことで、人的資本経営の実効性が高められると考える
人的資本等に関する指標の開示については、価値向上に寄与する開示項目の開示は限定的であり、また、目標値と実績値を合わせた開示はまだ少数。比較的開示しやすい指標に開示が偏っているように見受けられるが、本来は各企業にとって重要な指標を理由とともに説明し、目標値と実績値を合わせて開示する事が重要である
※本メールマガジンの内容は、2023 年 9 月 19 日に当社のニュースリリース「取締役会でサステナビリティを議論する企業は45%、約半数が Scope3 を開示~TOPIX100 構成企業を対象とした有報記載事項の調査結果公表~」の人的資本パートについて、一部分析内容を加え、執筆したものです
0. はじめに
2023 年 1 月の企業内容等の開示に関する内閣府令の改正により、有価証券報告書において、サステナビリティに関する企業の取組みの開示の一部として、人的資本と多様性に関する記載が求められるようになりました。
具体的には、人材の多様性の確保を含む人材育成の方針や社内環境整備の方針及び当該方針に関する指標の内容等について、必須記載事項として、サステナビリティ情報の「記載欄」の「戦略」と「指標及び目標」において記載を求められています。また、女性活躍推進法等に基づき、「女性管理職比率」、「男性の育児休業取得率」及び「男女間賃金差異」(以下、「開示義務3指標」という)を公表している会社及びその連結子会社に対して、これらの指標を有価証券報告書等において記載することが求められています。
そこで本稿では、TOPIX100 の構成企業のうち、本改正が適用された3月 31 日以降に終了する事業年度の有価証券報告書を調査時点で発行する 81 社を対象に、人的資本と多様性について、開示状況を調査しましたので、ご紹介します。
1.開示義務3指標の開示状況
開示義務3指標の目標値や連結ベースでの開示は一部企業にとどまる
はじめに、女性活躍推進法等に基づき開示を行う「女性管理職比率」、「男性の育児休業取得率">
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