G20/OECD コーポレート・ガバナンス原則の改訂から得られる日本企業への示唆
新たなリスクに向き合うための
コーポレートガバナンス体制構築は日本企業の課題
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コーポレート
ガバナンス Corporate
Governance - 指名・人財 Nomination/HR
- 報酬 Compensation
- サステナビリティ Sustainability
HR ガバナンス・リーダーズ株式会社
シニアストラテジスト
中川和哉
HR ガバナンス・リーダーズ株式会社
アナリスト
池田葵
■ サマリー
2023 年 9 月、G20/OECD コーポレート・ガバナンス原則の改訂が 20 カ国・地域首脳会議
(G20 サミット)にて承認された。今回の改訂では、第 6 章として「サステナビリティとレジリエンス(Sustainability and resilience)」が新たに設置された。また、「金融へのアクセスを促進」「投資家の保護」「企業のサステナビリティとレジリエンスの支援」という G20/OECDコーポレート・ガバナンス原則が果たす 3 つの目標が新たに明記されている
2022 年 9 月に公表された改訂案においては、今回の改訂における 10 の優先課題が明示されていた。2023 年 9 月に公表された最終版においても、10 の優先課題の改訂部分について、基本的に改訂案と大きな違いは生じていない。たとえば、合理的に予見可能な重要リスクに関する情報として、改訂案では新たにサステナビリティリスク、デジタルセキュリティリスクについて言及していたが、最終版ではそれに加えてコンプライアンス・リスクにも言及するといった微細な修正が多い
取締役会及びトップマネジメントチームに関連する新たな推奨事項のうち、最も注目すべき点は、経営上の意思決定におけるステークホルダー利益の考慮(consider)を求めている点である。従来は、経営上の意思決定におけるステークホルダー利益の認識(recognize)を求めることにとどまっており、ステークホルダー利益を重視する方向性がみられる。また、取締役会傘下の委員会の活用とその設置における柔軟性を保つことにも触れられている。監査委員会、リス ク 委員会のほか、サステナビリティ委員会や、デジタルセキュリティリスクやデジタルトランスフォーメーションについて助言する委員会の設置なども考えられることに加え、財務リスク以外のリスクも認識されるなかで、各委員会にリスク管理のタスクを分散して割り当てることは、監査委員会の過重負担回避につながると記されている
今回の G20/OECD コーポレート・ガバナンス原則の改訂における最も重要な要素は「リスクへの向き合い方」であると考える。サステナビリティリスクをはじめ、新たなリスクに向き合うためのコーポレートガバナンスの仕組みをどのように構築していくかは、日本企業が中長期的に向き合うべき課題になると予想する
1. G20/OECD コーポレート・ガバナンス原則の最終版が公表される
1-1 今回の改訂の全体像
新たな章として「サステナビリティとレジリエンス」が設置される
2023 年 9 月、G20/OECD コーポレート・ガバナンス原則の改訂が 20 カ国・地域首脳会議(G20 サミット)にて承認されました。G20/OECD コーポレート・ガバナンス原則の改訂については、2022 年 9 月に改訂案が出された後、OECD コーポレートガバナンス委員会での討議などを経て、今回承認された形になります。
G20/OECD コーポレート・ガバナンス原則は、国内外のコーポレートガバナンスに関する規制に影響を及ぼしています。2015 年に策定された日本のコーポレートガバナンス・コ ードも、OECD コーポレート・ガバナンス原則の内容を踏まえています。
今回の改訂では、新たに第 6 章として「サステナビリティとレジリエンス(Sustainability and resilience)」が設置され、従来第 4 章として設置されていた「コーポレート・ガバナンスにおけるステークホルダーの役割(The role of stakeholders in corporate governance)」の内容は第 6 章に統合されています(図表 1)。また、G20/OECD コーポレ ート・ガバナンス原則は政策立案者の支援を目的としていますが">
Opinion Leaderオピニオン・リーダー
HR ガバナンス・リーダーズ株式会社
シニアストラテジスト
中川和哉 Kazuya Nakagawa

HR ガバナンス・リーダーズ株式会社
アナリスト
池田葵 Aoi Ikeda
