HRガバナンス・リーダーズ株式会社

 

SSBJ「サステナビリティ開示基準」の公表

要点と企業に求められる対応

  • Corporate
    Governance
  • Nomination/HR
  • Compensation
  • Sustainability

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント

石丸 萌

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
アナリスト

前田 祐梨子

■ サマリー

2025年3月5日に、SSBJが「サステナビリティ開示ユニバーサル基準」および「サステナビリティ開示テーマ別基準」(SSBJ基準)の確定版を公表した。

SSBJ基準は、一部、企業がISSB基準の要求事項に代えてSSBJ基準独自の取扱いを選択することを認めているほか、必要性が認められる場合においてISSB基準にはないいくつかの要求事項を追加で定めている。しかし、原則としてISSB基準の要求事項をすべて取り入れており、国際的な比較可能性を大きく損なわないものとなるよう開発されている。

ユニバーサル基準では、サステナビリティ情報の報告期間および報告時期を財務諸表と揃えることが定められたほか、テーマ別基準の気候関連開示については、ISSB基準と同様に、TCFD提言に比べより詳細な開示が求められることとなった。

公開草案から、GHG排出量を含む指標の算定期間とサステナビリティ関連財務開示の報告期間を一致させることやレジリエンスの評価頻度、スコープ1、2、3のGHG排出量の絶対総量に関する定め等が変更となり、ISSB基準との整合性がより高まった。

SSBJ基準に準拠したサステナビリティ財務関連開示は将来的に有価証券報告書において義務化される見込みである。その適用は2027年3月期より時価総額3兆円以上のプライム上場企業から始まり、段階的な対象拡大を経て最終的には2030年代にプライム全上場企業が対象となる方向で議論されている。

企業には適用義務化時期の把握、SSBJ基準で求められる開示内容と現状の開示とのギャップ把握、開示内容の作成および保証に向けた準備を進めることが求められる。

目次

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1.はじめに

 2025年3月5日、日本におけるサステナビリティ開示基準の開発を担うサステナビリティ基準委員会(以下「SSBJ」という。)が、国内のサステナビリティ開示基準(以下「SSBJ基準」という。)の確定版を公表しました。今回公表されたのは、サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」およびサステナビリティ開示テーマ別基準のうち、第1号「一般開示基準」と第2号「気候変動開示基準」の3つの基準です1。これらは、国際サステナビリティ基準審議会(以下「ISSB」という。)が策定したIFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」およびIFRS S2号「気候関連開示」2(以下「ISSB基準」と総称する。)に相当する日本版の基準として開発が進められてきたものです。
 将来的には、有価証券報告書においてSSBJ基準に準拠したサステナビリティ関連財務開示が義務化される見込みとなっています。具体的な義務化の時期や対象企業については、金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(以下「サステナビリティ開示WG」という。)で進められている検討に基づき、金融庁が法令において定める予定です。
 本稿では、SSBJ基準の内容について、公開草案からの変更点、ISSB基準との相違点を整理するとともに、サステナビリティ開示WGにおける議論を踏まえて有価証券報告書におけるSSBJ基準の適用義務化に向けた動向に焦点を当てて解説します。

2.基準の構成と概要

基準の構成

 はじめに、SSBJ基準の構成と中身について解説します。SSBJ基準は、基準の全体像の説明および基礎的な概念などを定めた「ユニバーサル基準」(以下「適用基準」という。)と、具体的な開示内容を定めた「テーマ別基準」から構成されます。後者は、今後も新しい基準が策定されていく見込みですが、今回は第1号「一般開示基準」(以下「一般基準」という。)と第2号「気候関連開示基準」(以下「気候基準」という。)の2つの基準が公表されました。SSBJ基準への準拠を表明するためには、これらの基準すべてに準拠して開示を行うことが求められます。
 企業は、一般基準以外のテーマ別基準(現時点では気候基準のみ)が存在する場合は、その定めに従い各テーマに関するリスクおよび機会を開示することになりますが、個別のテーマ別基準が存在しない場合は、一般基準に従って情報開示を行うことが求められます。したがって、現時点では、気候関連のリスクおよび機会に関する情報開示に際しては気候基準に準拠し、それ以外の人的資本や生物多様性などのサステナビリティ関連テーマについての開示に際しては一般基準に準拠することになります。
 基準の構成をISSB基準と比較すると、SSBJ基準は、ISSB基準の構成を基礎としつつ、一部の構成が異なるものとなっています(図表1)。具体的には、ISSB基準のIFRS S1号が2つに分けられており、そのうち、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関して開示すべき事項を定めた「コア・コンテンツ」の部分(図表1左下)がSSBJ基準における一般基準(図表1右下)、「コア・コンテンツ」以外のサステナビリティ関連財務開示を作成する際の基本となる事項を定めた部分(図表1左上)がSSBJ基準における適用基準(図表1右上)となっています。

図表1

ISSB基準とSSBJ基準の関係
出典:サステナビリティ基準委員会(2025年3月6日) 「ASBJ・SSBJオープンセミナー2025 サステナビリティ開示基準アップデート」https://www.fasf-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/2/20250306_01.pdfをもとにHRGL作成

基準の概要

 適用基準は、サステナビリティ関連財務開示の作成に関する基本的な事項を定めています。主な内容として、サステナビリティ関連財務開示の対象となる報告企業および報告期間は関連する財務諸表と同じでなければならないこと、また報告時期については財務諸表と同時に開示しなければならないことが定められています。これは、サステナビリティ関連財務開示が関連する財務諸表に含まれる情報を補足し、補完するものであるものであるという考えに基づく対応であり、両者のつながりを理解できるようにするための重要な要素となっています。たとえば報告企業について、子会社を含めた連結財務諸表を作成している場合、サステナビリティ関連財務開示も同じ子会社を含む範囲を対象とすることが求められます。
 一般基準は気候変動を除くサステナビリティ関連、気候基準は気候変動関連のリスクおよび機会について具体的に開示すべき事項(コア・コンテンツ)を定めており、TCFD提言と同様の「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標及び目標」の4つの構成要素に基づく開示を要求しています。 
 図表2において一般基準および気候基準における開示要求事項の概要を整理していますが、気候関連開示については、ISSB基準と同様に、TCFD提言に比べより詳細な開示が求められています。たとえば、ガバナンスの項目において、気候関連のリスクおよび機会を監督する機関または個人が適切なスキルおよびコンピテンシーを有しているかといった、監督機関および個人に関する詳細な開示が求められているほか、指標および目標の項目において、スコープ3のGHG排出量を含む7つの産業横断的指標の開示が要求されています。

図表2

SSBJ基準における開示要求事項の概要
出典:サステナビリティ基準委員会(2025年3月6日) 「ASBJ・SSBJオープンセミナー2025 サステナビリティ開示基準アップデート」 https://www.fasf-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/2/20250306_01.pdf をもとにHRGL作成

3.公開草案からの変更点

 SSBJは、基準の策定に先立ち、2024年3月に草案段階のSSBJ基準(案)を公表し、パブリックコメントを募りました。当プロセスを通して寄せられたフィードバックを踏まえて再検討がなされた結果、公開草案の内容からいくつかの変更点が生じています(図表3)。本章では、公開草案からの主要な変更点について概説します。

図表3

SSBJ基準における公開草案からの主な変更点
注:ファイナンスド・エミッションとは、報告企業が行った投資及び融資に関連して、投資先または相手方による温室効果ガスの総排出のうち、当該投資及び融資に帰属する部分。グロス・エクスポージャーとは、資金提供された金額および未使用のローン・コミットメントで、報告企業の財務諸表の表示通貨で表される。
出典:サステナビリティ基準委員会(2025年3月6日) 「ASBJ・SSBJオープンセミナー2025 サステナビリティ開示基準アップデート」 https://www.fasf-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/2/20250306_01.pdf をもとにHRGL作成

 開示実務担当者にとって最も重要と考えられる変更点は、指標の算定期間に係る定めに関するものです。公開草案の適用基準は、企業が活動する法域の法令により報告が要求されている指標をサステナビリティ関連財務開示に用いる場合、当該指標の算定期間とサステナビリティ関連財務開示(および算定する財務諸表)の報告期間との間に差異が生じることを、一定の条件の下で認めていました。しかし確定基準ではこの内容が削除され、指標の算定期間とサステナビリティ関連財務開示の報告期間を一致させることが求められることになりました。

 これに伴い、気候基準でも、GHG排出量の算定に関する定めに変更が生じています。気候基準は、原則としてGHGプロトコルに基づくGHG排出量の測定を求めていますが、「地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「温対法」という。)に基づき算定したGHG排出量3をSSBJ基準の開示の数値として報告する選択肢も認めています。これについて公開草案では、一定の条件の下で温対法に基づくGHG排出量の算定期間とサステナビリティ関連財務開示(および関連する財務諸表)の報告期間との間に差異が生じることを認めていましたが、確定基準ではこの内容が削除され、温対法に基づくGHG排出量とサステナビリティ関連財務開示の報告期間に差異が生じる場合でも、報告期間に係るGHG排出量を算定することが求められることになりました。この変更の背景には、パブリックコメントを通して、サステナビリティ関連財務開示と関連する財務諸表との間のつながりの確保を重視する意見が寄せられたことがあります。
 その他の変更点としては、レジリエンスの評価頻度に関する定めやスコープ1、2、3のGHG排出量の絶対総量に関する定め、内部炭素価格が複数ある場合の取扱いに関する定めなど、公開草案に含まれていたSSBJ基準独自の定めが削除され、原則としてISSB基準と整合したものになるよう修正が加えられています。

4.ISSB基準との相違点

 SSBJ基準は、同基準を適用した結果として開示される情報が国際的な比較可能性を大きく損なうことがないよう、原則としてISSB基準の要求事項をすべて取り入れて策定されています。ただし、一部において、ISSB基準と異なる内容の定めが含まれています。本章では、ISSB基準とSSBJ基準の主な相違点について、ISSB基準の要求事項に代えてSSBJ基準独自の取扱いを追加的に認めている定めとISSB基準にはない要求事項を追加している定めに分けて解説します。

SSBJ基準独自の取扱いを追加的に認めている定め

 SSBJ基準は、相応の理由が認められる一部の場合において、SSBJ基準独自の取扱いを追加し、企業がISSB基準の要求事項に代えてSSBJ基準独自の取扱いを選択することを認めています。このケースに該当する主な項目を、図表4にまとめています。
 SSBJ基準独自の取扱いを選択したとしても、それにより直ちにISSB基準に準拠しないことにはならないとの見解をSSBJは示しています4

図表4

ISSB基準とSSBJ基準の相違点(SSBJ基準独自の選択肢を追加的に認めている定め)
注:ロケーション基準は、GHG排出量の算定にあたり、地域、地方、国などの特定の場所における平均的な排出係数を用いる方法。マーケット基準は、電力の供給業者との契約に基づく排出係数を用いる方法であり、再生可能エネルギーの利用などの企業のGHG排出削減の努力を反映することができる。
出典:サステナビリティ基準委員会(2025年3月6日) 「ASBJ・SSBJオープンセミナー2025 サステナビリティ開示基準アップデート」 https://www.fasf-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/2/20250306_01.pdf をもとにHRGL作成

ISSB基準にはない要求事項を追加している定め

 SSBJ基準は、必要性が認められる場合において、ISSB基準にはないいくつかの要求事項を追加で定めています。このケースに該当する主な項目を、図表5にまとめています。
 SSBJ基準に準拠した開示を予定している企業は、ISSB基準にはない追加の事項を開示しなければならないことを意識して準備を進める必要があります。なお、SSBJによると、追加で要求する開示事項は、ISSB基準の開示を作成する過程で入手する情報に基づき作成可能とすることが意図されており5、企業に大きな追加負担が生じないようになっていると考えられます。

図表5

ISSB基準とSSBJ基準の相違点(ISSB基準にはない要求事項を追加している定め)
出典:サステナビリティ基準委員会(2025年3月6日) 「ASBJ・SSBJオープンセミナー2025 サステナビリティ開示基準アップデート」 https://www.fasf-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/2/20250306_01.pdf をもとにHRGL作成

5.SSBJ基準適用義務化の時期および対象企業

プライム上場企業から段階的な導入を想定

 SSBJ基準の適用義務化の時期および対象企業については、現在サステナビリティ開示WGにて検討が進められているところですが、プライム上場企業を対象として時価総額を基準に段階的に導入していくことが想定されています6。まずは2027年3月期より時価総額3兆円以上のプライム上場企業にSSBJ基準の適用を義務化し、図表6の通り義務適用対象企業を段階的に拡大、最終的には2030年代にプライム全上場企業を対象とすることを基本線として検討されています。
 適用義務化時期の判断基準となる時価総額の算定方法については、IFRS財団が公表した「法域ガイド」で示された考え方を踏まえ、適用となる期の直前までの5事業年度末の時価総額の平均値を用いることが議論されています7

図表6

有価証券報告書におけるSSBJ基準の適用義務化想定スケジュール
出典:金融庁(2024年12月2日)「第5回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 事務局説明資料」 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/sustainability_disclose_wg/shiryou/20241202/01.pdf. よりHRGL作成

同時開示の適用時期について

 SSBJ基準は、サステナビリティ関連財務開示を関連する財務諸表と同時に報告することを要求していますが、法令の定めにより同時に報告しないことが容認される場合や任意開示においては、同時に報告しないことができると定めています8。サステナビリティ開示WGにおいては、SSBJ基準に準拠したサステナビリティ関連財務開示の作成を有価証券報告書の提出期限である事業年度後3か月以内に完了できるかという実務面の懸念から、適用初年度における経過措置として、二段階開示を認める方向で検討が進んでいます。また任意適用の場合は、2年目以降も二段階開示を可能とする方向で検討されています。
 具体的には、一段階目となる有価証券報告書においては2023年3月期から開示が義務化されているサステナビリティ情報や、提出期限までに作成が難しい定量情報以外を開示し、二段階目となる追加開示において一段階目で開示できなかった内容を含めたSSBJ基準に準拠したサステナビリティ関連財務開示を行うことが考えられます。
 なお、追加開示については遅くとも半期報告書の提出期限までに訂正報告書による開示が求められることが想定されます9

保証制度の導入時期について

 有価証券報告書におけるサステナビリティ情報は投資を行う上で有用な判断材料であり、当該情報の信頼性確保の観点から第三者による保証が必要と考えられています。サステナビリティ開示WGにおいては、開示と保証は同時期に適用すべきという意見もみられますが、高品質な保証の枠組みや保証提供者の確保、検査・監督の在り方等について十分に議論する必要性があることから、現時点では保証の適用時期を遅らせ、保証範囲も段階的に導入・拡大していくべきという方向で検討が進んでいます。
 気候変動においては、保証制度の導入時期をSSBJ基準の適用開始時期の1年後からとし、保証制度導入から2年間は保証範囲をスコープ1・2、ガバナンスおよびリスク管理に限定し、3年目以降は国際動向等を踏まえてサステナビリティ開示WGにおいて継続して検討することが議論されています10サステナビリティ保証業務の範囲および水準、保証業務の担い手などについても、引き続きサステナビリティ開示WGにおける議論の動向を注視していく必要があります。
 なお任意適用の場合は、開示自体が任意であることから保証も任意と考えられています11が、任意の保証に係る制度上の位置づけについては国際動向等を踏まえてサステナビリティ開示WGにて検討されることとなっています12

6.企業に求められる対応

 今後、企業がSSBJ基準に基づく開示の義務化に向けた準備を進めるうえでは、以下の点が重要になると考えます。
 第一に、自社がどの時期から開示義務化の対象となるかを把握することが肝要です。第5章で示したとおり、現時点では、2027年3月期から時価総額3兆円以上のプライム上場企業を対象に義務適用を開始し、その後段階的に適用対象企業を拡大する方向性が示されていますが、今後のサステナビリティ開示WGにおける議論を注視する必要があります。
 第二に、SSBJ基準においてどのような情報の開示が求められているかを正確に把握し、自社が現在行っているサステナビリティ関連情報開示とのギャップを把握することが肝要です。そしてそれに基づき、不足している取組みを実施するとともに、開示に向けた情報収集体制の構築を進める必要があります。気候関連開示については、すでにTCFD提言に基づく開示を行っている企業も多いと考えられますが、SSBJ基準ではより詳細な、また追加の開示が求められる点に注意が必要です。
 開示内容の作成にあたっては、「補足文書」13および「SSBJハンドブック」14を活用することが有用だと考えられます。これらはSSBJ基準を構成する文書ではないものの、基準の適用にあたり企業が参考にできる資料として位置付けられるものです。補足文書は、ISSB基準に関する付属ガイダンスおよび教育的資料のうち、SSBJ基準の適用において参考になるとSSBJが認めたもの、SSBJハンドブックは、SSBJ基準を利用する際の便宜を考慮してSSBJ事務局が作成する解説資料です。SSBJハンドブックの内容は、実務の進展を踏まえて随時更新することが予定されており、開示を作成する企業にとって有用なガイドラインとなると考えられます。
 また、SSBJは、ISSBにより新たな基準が公開される場合または既存のIFRSサステナビリティ開示基準が改訂される場合は、その取扱いについて可及的速やかに検討を開始するとしているため、ISSBにおける議論の動向も、日本企業の開示実務に影響を与える可能性があります。ISSBでは現在、生物多様性・生態系および生態系サービス、ならびに人的資本の2つのテーマについてのリサーチプロジェクトが実施されており、そこでの検討にもとづき、これらのテーマに関する新たな基準の開発の是非が決定される見込みです。こうしたISSBによる新基準の開発ならびに既存の基準の改訂の動向も、引き続き注視していく必要があります。
 最後に、開示内容の作成と並行して、開示の保証に向けた準備も進める必要があります。金融庁では、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示義務化に向けた議論と並行して、開示内容をいかに保証していくかについての検討が進められています。サステナビリティ保証業務の範囲および水準、保証業務の担い手などの大きな方向性に係る論点については引き続きサステナビリティ開示WGにおいて議論される予定ですが、保証業務の担い手の登録要件および義務責任、保証基準および倫理・独立性基準のあり方などに係るその他の論点については、2025年2月に設置された「サステナビリティ情報の保証に関する専門グループ」において議論されています15
 SSBJ基準に基づく開示の義務化に向けた企業の対応は多岐にわたり、計画的かつ段階的な準備が求められます。今後のサステナビリティ開示WGにおける議論や国際動向に注視しつつ、対応を進めることが重要です。

本テーマについてご意見やご質問などがございましたら、
お気軽にhr-con_post@hrgl.jpまでお問い合わせ願います。
※お問い合わせ内容によっては、数日以上のお時間をいただく場合やお答えできない場合があることをご容赦願います。

参考文献

  • 1 サステナビリティ基準委員会(2025年3月)「サステナビリティ開示ユニバーサル基準-サステナビリティ開示基準の適用」,「サステナビリティ開示テーマ別基準第1号-一般開示基準」,「サステナビリティ開示テーマ別基準第2号-気候開示基準」
  • 2 International Sustainability Standards Board (2023年6月) “IFRS S1: General Requirements for Disclosure of Sustainability-related Financial Information,” “IFRS S2: Climate-related Disclosures.”
  • 3 日本では、温対法第26条第1項にもとづき、対象事業者に対し、自らのGHG排出量を算定し国に報告することが義務付けられている。
  • 4 サステナビリティ基準委員会(2025年3月6日) 「ASBJ・SSBJオープンセミナー2025 サステナビリティ開示基準アップデート」14頁.
  • 5 サステナビリティ基準委員会(2025年3月6日) 「ASBJ・SSBJオープンセミナー2025 サステナビリティ開示基準アップデート」14頁.
  • 6 金融庁(2024年12月2日)「第5回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 事務局説明資料」21頁.
  • 7 金融庁(2024年6月28日)「第3回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 事務局説明資料」5頁.
  • 8 サステナビリティ基準委員会(2025年3月5日)「サステナビリティ開示ユニバーサル基準」16頁.
  • 9 金融庁(2024年10月10日)「第4回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 事務局説明資料」2-4頁.
  • 10 金融庁(2024年12月2日)「第5回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 事務局説明資料」21頁.
  • 11 金融庁(2024年6月28日)「第3回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 事務局説明資料」16頁.
  • 12 金融庁(2024年10月10日)「第4回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 事務局説明資料」32頁.
  • 13 サステナビリティ基準委員会(2025年3月27日)「2025年3月補足文書の公表」.
  • 14 サステナビリティ基準委員会(2025年3月31日)「2025年3月SSBJハンドブックの公表」.
  • サステナビリティ基準委員会(2025年3月)「サステナビリティ開示ユニバーサル基準-サステナビリティ開示基準の適用」https://www.ssb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/6/jponly_20250305_01.pdf
  • サステナビリティ基準委員会(2025年3月)「サステナビリティ開示テーマ別基準第1号-一般開示基準」https://www.ssb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/6/jponly_20250305_02.pdf
  • サステナビリティ基準委員会(2025年3月)「サステナビリティ開示テーマ別基準第2号-気候開示基準」https://www.ssb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/6/jponly_20250305_03.pdf
  • International Sustainability Standards Board (2023年6月) “IFRS S1: General Requirements for Disclosure of Sustainability-related Financial Information,” “IFRS S2: Climate-related Disclosures.”
  • サステナビリティ基準委員会(2025年3月6日) 「ASBJ・SSBJオープンセミナー2025 サステナビリティ開示基準アップデート」https://www.fasf-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/2/20250306_01.pdf
  • 金融庁(2024年6月28日)「第3回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 事務局説明資料」, https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/sustainability_disclose_wg/shiryou/20240628/01.pdf金融庁(2024年10月10日)「第4回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 事務局説明資料」,https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/sustainability_disclose_wg/shiryou/20241010/01.pdf
  • 金融庁(2024年12月2日)「第5回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 事務局説明資料」, https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/sustainability_disclose_wg/shiryou/20241202/01.pdf
  • サステナビリティ基準委員会(2025年3月27日)「2025年3月補足文書の公表」https://www.ssb-j.jp/jp/news_release/402512.html
  • サステナビリティ基準委員会(2025年3月31日)「2025年3月SSBJハンドブックの公表」https://www.ssb-j.jp/jp/news_release/402607.html

Opinion Leader

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント

Moe Ishimaru

慶應義塾大学総合政策学部卒。前職は外資IT企業にてDXやデータ・AI活用を支援。当社では主にサステナビリティ領域のリサーチを担当。

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
アナリスト

Yuriko Maeda

東京大学大学院総合文化研究科修了。前職はメーカーの経営管理部門にて、社内におけるSDGs意識の醸成やダイバーシティ推進のための施策に携わる。当社では、コーポレートガバナンスの各領域に係る国内外のリサーチ業務に従事。