従業員向け株式報酬導入の意義と活用方法
人的資本経営を支える従業員向け株式報酬制度
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コーポレート
ガバナンス Corporate
Governance - 指名・人財 Nomination/HR
- 報酬 Compensation
- サステナビリティ Sustainability
HRガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント
根岸 純伍
■ サマリー
日本は従業員向け株式報酬制度の導入が欧米に比べて進んでいないものの、同制度を取り巻く環境の整備が進むことで日本においても普及が加速すると推察する。
日経225社においては、2023年から2024年にかけて従業員向け株式報酬制度の導入開示は22.2%から28.4%に上昇した。2024年6月末時点では日経225社のうち、時価総額上位50社においては52%、時価総額上位25社においては60%となり、時価総額が上がるにつれて、従業員向け株式報酬制度の導入開示比率が高まる傾向にある。
人的資本経営においては、従業員が株式を保有することで、経営者と従業員が一体となって企業価値向上を目指すことの重要性がより増している。
人財戦略として、人財獲得および自社の従業員のリテンション目的や、次期経営層の経営意識醸成および対象者のパフォーマンス向上による企業価値向上を目的に、従業員向け株式報酬制度を導入することが考えられる。
従業員向け株式報酬制度の導入目的の浸透を図るために、経営者が従業員に対して自社の企業価値向上へのストーリーを説明することや、制度導入後も継続して対象者に対して従業員向け株式報酬制度の意義等を共有するワークショップを行う等、工夫することが考えられる。
従業員向け株式報酬制度は、人的資本への投資であり、従業員に対する経営者からの強いメッセージを伝える手段でもある。従業員向け株式報酬制度というツールを使って従業員とのエンゲージメント(対話)を行うきっかけとし、経営者と従業員が一体となって企業価値の向上に繋げていただきたい。
1.従業員向け株式報酬制度導入の潮流
1-1 従業員向け株式報酬制度を取り巻く環境
欧米においては、早くから従業員向け株式報酬制度の導入検討および環境整備が進められてきたが、日本においては、従業員持株会制度を除けば、一般的に普及しているとまでは言えない状況が続いていた。これは、欧米諸国と比較して、日本では企業価値向上に向けたインセンティブが従業員に対して働きづらい状況にあることを意味し、日本の従業員エンゲージメントが欧米諸国と比較して低いと言われる一因となっているとも考えられる。
近年の日本においては、2020年9月に経済産業省から「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~人材版伊藤レポート~」が発表され、経営戦略と人財戦略を連動させることおよび人的資本への投資は経営の重要テーマの一つであるとの認識が徐々に広まりつつある。また、2022年にコーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)が改訂され、自社株報酬や持株会の活用は幹部候補に対する動機付けとして有益であり、早い段階から企業価値や株価に対する意識を高める効果やエンゲージメントの向上効果等、人的資本拡大にも資するものであることが提言された。CGSガイドラインの改訂を踏まえ、2023年に経済産業省から『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』の改訂版が公表され、従業員に自社株式">
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コンサルタント
根岸 純伍 Jungo Negishi
