HRガバナンス・リーダーズ株式会社

 

東証の「資本コストや株価を意識した経営」の現在地を紐解く

  • Corporate
    Governance
  • Nomination/HR
  • Compensation
  • Sustainability

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント

朝田 悠人

■ サマリー

東京証券取引所(東証)が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」を公表し1年強が経過した。CG報告書の記載の充実が進展し、ROEやROIC、株主資本コスト、WACCに言及する企業は増加傾向にある

東証は2024年8月30日に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する今後の東証の施策を公表している。主に今後の改善が期待される企業に向けて、「投資者との目線の『ズレ』を解消するための検討材料の提供」、「投資者との円滑なコミュニケーションの促進」を推進する対応策が示されている

また、2023年11月に東証から再周知された要請の中では、現時点でのPBRの水準に依らず資本コストや株価を意識した経営を進めることが言及された。コーポレートガバナンス・コード(CGコード)導入後の日本企業におけるPBRの推移を振り返ると、過去のPBRは将来の市場評価を必ずしも約束していない

東証の要請を受けて、PBR1倍割れの企業を中心として、資本政策の見直しを検討する企業が増加傾向にある。政策保有株式の縮減は道半ばであるが、時価総額が比較的大きい企業群では縮減のゆるやかな加速が見受けられる

東証の示すポイントを踏まえ、取締役会のコミットメントの強化および現状分析の深化、執行機能の強化の一環としてのCFOの設置、企業価値向上を動機づける役員報酬・従業員株式報酬制度の導入などがアプローチとして考えられる

各社の置かれたPBR・ROEの水準の現状や資本コストなど様々な要因を睨んだうえで、その改善に向けた道筋を、サステナビリティ、人的資本といった将来的な財務価値を最大化する観点からも描くことも重要となるだろう

1.はじめに

1-1 東証の要請を受けた1年強を振り返る

 東京証券取引所(東証)が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」を公表し1年強が経過しました。一連の流れを振り返ると、2023年3月に公表された「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて」では、プライム市場、スタンダード市場全上場企業を対象として、①現状分析、②計画策定・開示、③取組みの実行というサイクルの継続的な実施が要請されました(図表1)。その後、「PBR1倍割れ」というキーワードが先行していたことを受け、現時点でのPBRの水準に依らず取組みが求められるという本来の要請の趣旨が改めて周知されるとともに、2024年1月から本要請に対応している開示企業一覧表が公表される運びとなりました。 2月には、投資家の視点を踏まえた「資本コストや株価を意識した経営」のポイントと事例を公表し、本要請の対応のさらなる後押しをしています。
 また本要請を受けた各社の対応状況に目を向けると、特にプライム市場上場企業ではおおよそ8割程度の企業が本要請の対応を開示しており、全般を通じてCG報告書の記載の充実が進展しました。プライム市場上場企業のCG報告書における、ROEやROICといった資本効率指標・株主資本コストやWACCの記載状況を確認すると、いずれも昨年から大幅に増加しており、少なくとも各社の形式的な取組みが進展していることがわかります">

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Opinion Leader

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント

Yuto Asada

神戸大学経済学部卒。三菱UFJ信託銀行にて個人富裕層向け資産運用コンサルティング業務に従事した後、出向し現在に至る。日本証券アナリスト協会検定会員。

CORPORATE
STATEMENT

新しい未来へのストーリーを。

ひとりを輝かせることが、
企業を、社会を、そして世界を
輝かせることにつながる。
そう信じている、だから。
志ある企業が、未来にわたって輝き続けるための
持続可能な企業経営の、力となること。
それが、私たち HRガバナンス・リーダーズの
使命です。
ひとりひとりを、それぞれの組織を、強くし、
有機的につなぐ、
サステナビリティガバナンスで。
企業の新しい未来への、ストーリーを創る。
ビジョンを強く実行し続ける在りかたへと、
変えていく。
日本を動かし、世界を変えていく人たちの、力へ。
未来を生み出す力の、力へ。
アイデアと、経験と、知識と、情熱を、
その想いへと、全力で注ぎ込みながら。
ずっとずっと続く道をともに創り、歩み続けます。
一緒に地球を輝かせていく、
そう、仲間となって。