HRガバナンス・リーダーズ株式会社

 

「稼ぐ力」を最大化する経営執行体制・経営チームの構築

その⑤ 戦略実現に向けた権限委譲と会議体の最適化

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HRガバナンス・リーダーズ株式会社
シニアマネージャー

岡村 佑太

■ サマリー

シリーズ「『稼ぐ力』を最大化する経営執行体制・経営チームの構築」では、これまで4件のレポートを発行してきました。今回の第5号では、戦略実行に向けて重要な意思決定機能を担う「会議体」について取り上げます。スピード感を持って戦略の実行を推進していくためには、権限委譲を伴う会議体の最適化が必須です。その中でも特に重要と位置付けられている「経営会議」については、単なる報告や承認の場を超え、CEOが戦略的思考に集中し、経営チームが自律的に事業をドライブできる場となるよう変革すべきと考えます。

執行側における各種会議体においては、経営の方向性を左右する戦略的テーマから、各事業部門の活動の進捗確認など多岐にわたります。これに対しては、様々なテーマについて、「時間軸」と「意思決定レベル」で整理することで、将来目指す戦略に対して会議テーマを正しく設定できているかどうかを把握することが可能となります。

会議設計において重要な点は、CEOから経営チームや各責任者への権限委譲です。権限委譲は、単なる「業務分担」ではなく、「意思決定の裁量権と、それに伴う結果への責任」をセットで委譲することが重要です。CEOからの権限委譲の在り方を踏まえ、会議テーマ毎に適切な権限・役割ならびに適正な参加者を設定することで、形骸化した会議ではなく、企業の成長と変革を強力に推進する「あるべき会議体」を設計することに繋がります。

あるべき会議体を設計するための具体的なステップとしては、①現状の把握と課題発見、②あるべき姿の定義、③会議体の再設計と配置、④運用ルールの詳細化、⑤実行と継続的な改善が挙げられます。さらに上記を進めるうえでは必ず経営トップを巻き込み、経営トップの想いをベースに会議設計を行っていくことが重要です。

目次

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1.執行側における会議体の考え方

1-1 「稼ぐ力」を高めるための会議体

 シリーズ「『稼ぐ力』を最大化する経営執行体制・経営チームの構築」では、これまで4件のレポートを発行してきました。
 今回の第5号では、執行強化に向けの重要な要素である「会議体」について取り上げます。意思決定機関である会議について、その役割と目的、そしてCEOからの権限委譲の観点を踏まえ、適正な会議体の在り方について説明します。会議体は各社の固有性が高く、これまで体系的に整理をされていない分野ですが、「稼ぐ力」を高めるためには、決して避けては通れません。本稿を通じて各社の会議体の検討に貢献できれば幸いです。
 特にCGガイダンスでも述べられているように経営会議は執行の最高意思決定機関として非常に重要であり、第3号で取り上げた執行組織や経営陣の要件とも密接に関わっています(図表1参照)。経営会議を、単なる報告や承認の場を超えて、CEOが戦略的思考に集中することが可能となり、経営チームが事業推進に集中することができる場として位置付けることができれば、強靭な経営チームの構築へとつながります。

図表1

価値創造ストーリーを実現する経営執行体制・経営チーム組成の検討項目
出典:HRGL作成

1-2 経営会議に関する各社の課題

 はじめに、会議体の中でも特に主要な会議である経営会議について、各社がどのような課題感を抱えているのか、よく伺う声を整理しました。
1.意思決定の遅延と非効率性
 意思決定のボトルネック化:本来現場や各CxOに委譲されるべき意思決定が、最終的にCEOの承認待ちに据え置かれている。CEOが細部の決定にまで関与しないと物事が進まない。
組織階層の多さと稟議プロセスの複雑性:意思決定者の数が多く承認ルートが複雑化しているため、意思決定までに時間がかかる。
2.議論の質の低さ
 アジェンダの戦略性の欠如:本来議論すべき「未来の戦略」や「本質的な経営課題」ではなく、各部門からの「業務報告」に終始している。
 異論・反論が出にくい文化:上位者への遠慮や同質性の高いメンバー編成、失敗を恐れる文化などから建設的な異論や批判が出にくい傾向がある。
 リスクの多角的な検討不足:取締役会に上程する経営会議の段階で、戦略・財務・法務などあらゆる側面からのリスクが十分に洗い出され評価・議論されていない。
3.責任の曖昧さと当事者意識の欠如
 縦割り組織の弊害:経営会議が各部門の利害調整の場となり、全社最適ではなく部門最適な意思決定がなされている。
 責任の押し付け:経営会議で多数決や合意で決定された場合、その後の結果に対して個々人の責任があいまいになりがち。結果としてだれも責任を取らない状態になる可能性がある。

 上記は経営会議に関する各社の声ですが、経営執行強化を図る上で解決すべき重要な課題です。経営会議の改革を進めるうえでは、執行全体における各種会議体の在り方について検討する必要があります。会議体の適正化を実現することで、適切な権限委譲による意思決定スピードの向上、会議における役割設定や責任の明確化による議論の質の向上、そして当事者意識の醸成が期待できます。

1-3 会議の機能

 具体的な会議体の設計に進む前に、執行側における会議の機能について整理します。
 会議には、以下5つの機能があり、各機能を満たすための最適な形で会議を構成することが重要です。
経営意思決定機能:企業の進むべき方向性、戦略、重要なリソース配分を決定する
例)戦略的意思決定、重要経営課題の決定、予算投資承認など
監督・評価機能:決定された戦略や計画が達成されているかを評価し、その過程で生じた課題を特定し、継続的な改善を促す
例)KPIの進捗確認、計画と実績の乖離分析、リスク管理状況の評価など
情報共有・連携機能:経営に関する正確な情報と共通認識を経営層で共有し、部門間のサイロ化を防ぎ、全体最適の視点での連携を強化する
例)経営状況の共有、部門間の進捗・課題共有、リスク情報の共有など
課題解決・問題解決機能:顕在化している経営上の課題や問題に対して、経営層が知恵を出し合い、解決策を導く
例)ボトルネックの特定と対応、部門横断的な課題の調整など
人材育成機能:会議への参画を通じて、経営幹部や次世代リーダー候補の経営的視点、判断力、問題解決能力、リーダーシップスキルを向上させる
例)全社視点の醸成、経営的思考力の向上、リーダーシップスキルの開発など

 会議のテーマによって重視される機能は異なります。そのため、効果的な会議設計を行うためには、現在行われている会議について現状把握を行うことが重要です。

2. 会議体の最適化事例:A社

 具体的に会議体設計のイメージを持っていただくために、初めにA社の事例についてご紹介します。
【概要】
 A社はグローバルに多角的な事業(自動車部品、産業機械、精密機器など)を展開する製造業です。創業からの歴史とM&Aによる拡大を経て、本社と事業会社間の連携不足、意思決定の遅延、グローバル全体での最適化の課題を抱えていました。これらの課題を解決し、企業としての敏捷性と競争力を高めるため、会議体を再設計しました。

【課題】
複雑な事業構造と縦割り:各事業会社の独立性が高く、ホールディングス(HD)本社と事業会社、事業会社間の連携が非効率。
会議の多層化と形骸化:事業会社・部門レベルの会議が乱立し、情報共有に終始するものの、目的が曖昧なものが多数存在。結果、経営層への情報伝達に時間がかかり、正確性も低い。
HDと事業会社の権限曖昧:HD本社がどこまで関与し、事業会社にどこまで権限があるか不明確で、二重承認や意思決定の遅延が発生。
戦略と実行の乖離:HDで策定された全社戦略が、各事業会社や現場レベルに十分に浸透せず、具体的な実行に繋がりにくい。
リスクとコンプライアンスの統制不足:各事業会社で個別にリスク管理が行われ、全社的な横断的リスク管理体制が弱い。

【会議体設計の設計思想(目標)】
 A社は、ガバナンス強化と戦略実行力の向上を両立させるため、以下の目標に基づき会議体を設計することにしました。
1. ホールディングスと事業会社の役割・権限を明確化
HDは「全社戦略」、「グループ経営資源最適配分」、「グループ全体のガバナンス・リスク統制」に集中する。事業会社は「各事業戦略の策定・実行」、「事業損益責任」を負い、HDから権限を委譲される。
2. 意思決定の階層化とスピード向上
各会議体の目的・参加者・アウトプットを明確にし、情報共有と意思決定の分離を徹底する。不要な承認プロセスを排除し、各階層での意思決定権限を強化する。
3. グループ横断連携とシナジー創出
各事業の知見やリソースを共有し、新たな価値を創出するための横断的な会議体を新設・強化する。
4. リスク管理とコンプライアンス体制の強化
全社的なリスク情報の一元管理と、有事の際の迅速な対応体制を会議体を通じて確立する。

【会議体最適化に向けた取組み】
 A社は上記目標のもと、具体的に下記ステップにより、会議体の最適化として会議テーマ・目的・機能、参加者について整理しました(図表2参照)。

1.現状把握と課題特定
• 全会議の棚卸しを行い、各会議がどのレベル・時間軸の意思決定を扱っているか(あるいは混在しているか)をマッピング。
• 「CEOへの意思決定集中」、「各事業会社の縦割り」、「グローバルでの技術標準化の遅れ」といった具体的な課題を特定。
2.「あるべき姿」のビジョンと意思決定方針の定義
• ビジョン:「迅速な権限委譲とグループ全体最適の推進を通じて、グローバル市場で持続的な競争優位性を確立する」ことをビジョンに設定。
• 戦略レベル: CEOと取締役会が最終承認し、各事業部門は提案と実行責任を負う。
• 事業/機能レベル:各CxOや事業部長に権限を委譲し、各機能・事業領域の責任と裁量を明確化。
• 業務執行レベル:現場マネージャーやリーダーに権限を委譲し、迅速な対応を可能にする。
3.あるべき意思決定マトリクスと会議体の設計・配置
• 各意思決定事項の最終承認者と連携すべき役割を明確化。

図表2

A社における会議体(設計前と設計後)
出典:HRGL作成

 本取組みによる効果としては下記が挙げられます。複雑なグローバル製造業としての強みを活かしつつ、変化の速い市場に柔軟に対応できる強靭な意思決定体制の構築へと繋がっています。
意思決定の高速化: 各階層での権限が明確になり、最適なレベルで迅速な意思決定が可能に。
グループ全体最適の推進: 縦横の連携会議により、各事業・地域の知見やリソースが共有され、シナジーが最大化。
ガバナンスとリスク管理の強化: 全社的なリスク情報が集約され、グローバルレベルでの統一的な対応が可能に。
DX・イノベーションの加速: 技術戦略やDX推進に特化した会議体が、投資と実行を迅速化。
 本事例では、大企業が抱える複雑性と規模に対応するため、階層を明確にし、HDと事業会社の役割分担を徹底することで、全体最適と個別最適の両立を目指した会議体設計の成功例を示しました。
 以降、本事例について深く理解する上でのポイント(①会議テーマ、②権限委譲の在り方、③あるべき会議体の設計ステップ)について解説します。

3. 事例解説①:会議テーマ

 効果的な会議設計を行うためには、現在行われている会議について現状把握を行うことが重要です。執行側の会議では、全社に関わるテーマから進捗報告など様々なレベルのテーマを扱います。例えば、経営の方向性を左右する意思決定を行う経営会議、各事業部門の活動の進捗を確認する事業部門会議などです。
 これらのテーマを整理するためには、「時間軸」と「意思決定レベル」によって9つの象限で整理すると分かりやすいです(図表3参照)。
• 時間軸:短期(~1年)、中期(1~3年)、長期(3年以上)
• 意思決定レベル:戦略レベル、戦術レベル、実行レベル

図表3

会議の意思決定マトリクス
出典:HRGL作成

 このように「時間軸」と「意思決定レベル」にて整理を行うことで、現在行われている会議がどのテーマに多く時間を割いているか、今後目指すべき方向性に対して適切なアジェンダ設定ができているかという全体感を把握できます。例えば、経営会議でいうとテーマが短期・実行レベルの議論に偏っていないか、中長期を見据えた事業ポートフォリオ戦略に十分な時間を割いているかなど、現状と理想の姿を比較できます。
 また、各会議体のミッション・ステートメントを定め、可視化することが重要です。その会議体の存在意義と目的を明確にすることで、会議の「なぜ開催するのか」「何を達成すべきか」をはっきりさせ、議論を集中させ、最終的に期待する成果を生み出すことに繋がります。
 A社の事例では、HD役員会や事業会社社長会は存在していたものの、戦略的議論が不足している、かつHDと事業会社間での調整会議が少ない状況でした。また、各部門の定例会議も形式的になっており、意思決定権限のない責任者不明瞭な会議も存在していました。その状況から新たな会議体としてグループ全体で全社戦略の策定・承認、重点方針決定を行うグループ戦略会議の設置、さらには全社方針の監督、重要リスク管理を行うグループ経営会議をHD役員会から再編しています。その他、グループ内のシナジーを創出するための事業横断戦略会議、さらに、部門成果マネジメント会議、特定課題解決会議、全社ナレッジ共有会など目的を明確化した会議体の設置を実施しています。

4. 事例解説②:権限委譲の在り方

4-1 権限委譲の考え方

 効果的な会議設計を行う際には、各テーマに対して、会議のオーナーや参加者は誰で、どのように進めるかという役割分担を行うことが重要です。ここでは、「権限委譲の在り方」を通じて会議体の運営や参加者の役割について説明します。
 権限委譲とは、CEO等の上位者が持つ意思決定権限の一部を、他の執行役員や部門長、あるいは特定の会議体へ委譲することを意味します。ここで重要なのは、単なる「業務分担」ではなく、「意思決定の裁量権」と「それに伴う結果への責任」をセットで委譲することです。そのため、権限委譲を行う際には、以下の点を見極めることが求められます。
• 委譲される側の専門性や意思決定能力
• 判断力・リーダーシップなどのスキル
• 責任感や倫理観の十分さ
 では、会議体において権限委譲を行う際、どのような考え方・方向性がありうるかを整理します。

権限委譲の考え方:「時間軸」「意思決定レベル」による整理
長期/戦略レベルでの権限委譲
中長期計画、大規模投資、M&Aなど、全社に大きな影響を与える意思決定権の一部をCEOから委譲。戦略レベルだと最終意思決定はCEOとすることが通常であるため、経営チームとしてはCEOの意思決定を支援する活動がメインとなる
中期/戦術レベルでの権限委譲
事業部ごとの予算配分、マーケティング戦略、新製品開発の優先順位など、特定の事業領域における意思決定権を委譲。CEOからは各領域のCxOに大幅に権限が委譲されるケースも多く、その場合CEOは承認者としての役割となる
短期/実行レベルでの権限委譲
日常業務のプロセス改善、短期的な目標達成に向けた施策など、現場に近い意思決定権を委譲。CEOは全体的なリスクの把握をしつつ、細かな業務への介入はせず、経営チームもしくはさらに下の階層へと権限を委譲する

4-2 権限委譲の方向性と程度の設定

 権限委譲に関して検討を行う上では、権限委譲の程度の設定することも重要です。その大きな方向性として、トップダウン/中央集権型とボトムアップ/自律分散型の2つの軸があります。
 例えば、長期/戦略レベルのテーマについて、トップダウン/中央集権型の場合はCEOが自ら計画立案・最終判断を行い、経営チームは情報収集や実行支援を行います。一方でボトムアップ/自律分散型の場合、最終承認者はCEOですが、経営チームでの議論を主導・経営チームが自律的に計画を立案する等が考えられます。その反対に、短期・実行レベルの会議テーマの場合は、トップダウン型の場合はCEOが具体的な指示まで行うケースもありますが、ボトムアップ型の場合は経営チーム、さらには各現場への権限委譲がなされるケースが多くなります。
 このようにトップダウン/中央集権型とボトムアップ/自律分散型の2軸をベースに、自社の権限委譲の程度について検討することで、会議の方向性を明確にすることができます(図表4参照)。権限委譲の程度がどちらの軸に近いかは、事業環境や組織文化、CEOリーダーシップ、後継者育成等、多岐にわたる要素を考慮したうえで、自社に合う方針を定めることが重要です。
 A社の事例では、「CEOへの意思決定集中」がなされていたため、スピード感のある意思決定が困難となっていました。そこで、ビジョンとして「迅速な権限委譲とグループ全体最適の推進を通じて、グローバル市場で持続的な競争優位性を確立する」を掲げ、戦略レベルでは、CEOと取締役会が最終承認し、各事業部門は提案と実行責任を負うように役割分担を行うとともに、事業/機能レベルでは各CxOや事業部長に権限を委譲し、各機能・事業領域の責任と裁量を明確化しました。さらに、業務執行レベルでは、現場マネージャーやリーダーに権限を委譲し、迅速な対応を可能にしています。

図表4

会議テーマのレベル別 権限委譲の方向性
出典:HRGL作成

 さらに、経営会議に関しての補足事項として、経営会議の位置づけをCEOの諮問機関とするか、決議機関とするかという考えがあります。諮問機関として経営会議を位置付けた場合、CEOが自身の最終的な意思決定を行うために、経営メンバーから意見や助言、情報提供を受けります(トップダウン/中央集権型)。一方で決議機関として経営会議を位置づけた場合、CEOから特定の権限を委譲され、会議での合意または多数決によって、特定の事項に関する意思決定(決議)を行います(ボトムアップ/自律分散型)。一般的に、海外のエグゼクティブ・コミッティはCEOの諮問機関としての位置づけが多く、日本における経営会議は決議機関としての位置づけが多い傾向があります。

5. 事例解説③:あるべき会議体の設計ステップ

 これまで会議テーマと権限委譲について説明をしてきましたが、それらの考えを踏まえて自社にとってあるべき会議体を設計するためのステップについて説明します。
ステップ1: 現状の把握と課題発見
• 今ある会議を全てリストアップし、それぞれの会議で「何を(どんなレベルの決定を)」、「いつ(どの時間軸で)」決めているかを書き出す。
• さらに、そこにどんなムダ(時間、人、責任の曖昧さ)があるかを見つける。
ステップ2: 「あるべき姿」の定義
• 各レベルの決定権限の原則を決める。どのレベルの意思決定(戦略、戦術、実行)は、誰(例: CEO、事業部長、現場リーダー)が最終的に決めるべきか、その基本ルールを明確にする
• 主要な決定事項について、「意思決定レベル」と「時間軸」のマトリクスで整理し、誰が最終承認者となるべきかを明確に割り振る
ステップ3: 会議体の再設計と配置
• ステップ2で描いたマトリクスを実現するために、必要な会議体を新設・再編する
• 各会議の目的を「1つ」に絞る
例:この会議は、最終承認者が〇〇レベルの△△意思決定をする場である(○○は戦略、戦術、実行のいずれかが該当。△△は長期、中期、短期のいずれかが該当)
ステップ4: 運用ルールの詳細化
• 各会議がスムーズに進むよう、具体的なルールを整備する
 ♦ 参加者:会議の目的に基づき、意思決定に必要な最小限のメンバーに絞る
 ♦ アジェンダと時間:議論と意思決定に集中できるよう議題と時間配分を厳格にする。情報共有は会議前に済ませる
 ♦ アウトプット:決定事項、担当者、期限を明記した議事録のフォーマットを統一し、必ず共有する
ステップ5: 実行と継続的な改善
• 新しい会議体とルールを実際に動かし、定期的に効果を測定・評価し、改善する
• 経営層が新しいルールを率先して守り、権限委譲を実践する
• 組織や事業環境の変化に応じて、会議体を柔軟に見直し、常に最適な形を追求する

 A社の事例においても、上記ステップ1~3を踏まえ、最適な会議体の設計を行っています。これらのステップを実行することで、会議の効率化と意思決定の明確化を図り、組織全体のパフォーマンス向上を目指すことができます。

6. 最後に

 今回は「稼ぐ力」を高めるための経営執行改革において、執行側の会議体を中心に述べてまいりました。特に特にCGガイダンスでも示されているように、経営会議の在り方を考えることは、経営チームにおける権限や役割の設計と連携する内容であり、強靭な経営チーム構築においては欠かせない議論となります。それゆえ、各社においてはぜひ自社にとってのあるべき会議体について検討されることを推奨いたします。
 加えて、今回は仕組みとして会議体に焦点を当てて説明しましたが、真に稼ぐ力を高めていくための経営チーム作りを行うのであれば、仕組みだけではなく、CEOと執行役員との信頼関係の醸成は必須です。さらにCEOが目指すビジョンや想いを実現するために、経営チームとして各人が全社視点を持ち、CEOと共に会社の未来を考えていくことが求められます。それが経営チームとしてのパフォーマンスに直結します。今後は、強靭な経営チーム構築における仕組み以外の点にも焦点を当てたメールマガジンも発行していく予定です。引き続き注目いただければ幸いです。

Opinion Leader

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
シニアマネージャー

Yuta Okamura