HRガバナンス・リーダーズ株式会社

 

日経225社のCG報告書における
「エクスプレイン」の状況

投資家との建設的な対話に資する開示のポイント

  • Sustainability
  • Nomination
    Compensation/HR
  • Strategy/Risk
  • Corporate
    Governance

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント

小沢 潤子

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
アナリスト

前田 祐梨子

■ サマリー

2015年のコーポレートガバナンス・コード(以下、「CGコード」という)の導入以降、日本企業ではガバナンス体制の形式的な整備が進んだが、ガバナンスの実質化に向けていまだ多くの課題が残されている。コーポレート・ガバナンスに関する報告書(以下、「CG報告書」という)における開示に関しては、形式的なコンプライや不十分なエクスプレインが多く見受けられるなど、CGコードの本来の趣旨であるコンプライ・オア・エクスプレインの形骸化も指摘されている。

こうしたなか、東京証券取引所(以下、「東証」という)は2023年3月に「建設的な対話に資する『エクスプレイン』のポイント・事例について」を公表し、企業がCGコードの本来の趣旨に立ち返り、エクスプレインも含めて投資家との対話に資する開示を充実させることを要請している。

英国では、近年エクスプレインが増加傾向にある。英国財務報告評議会(FRC)は、各企業の個別事情に適した柔軟な対応が進んでいるとして、この傾向を評価している。

日経225構成企業を対象に、CG報告書におけるコンプライ、エクスプレインの状況(2015年~2023年)を調査した結果、CGコードの全原則をコンプライする企業の数は年々増加傾向にあり、反対にエクスプレインの件数は減少傾向にあることが明らかになった。東証からの要請の一方で、日本企業全体の動きとしては、エクスプレインからコンプライへの移行が進んでいることがうかがえる。

企業が投資家と建設的な対話を行うためには、形式的にコンプライするだけでなく、適宜エクスプレインを活用しつつ、コーポレートガバナンスに関する自社の取組みを透明かつ具体的に説明することが求められる。エクスプレインに際しては、東証が要請するとおり、①実施していない内容を明確に示すこと、②実施していない内容については、不実施の理由を自社の個別事情や代替手段の妥当性の観点から説明すること、③実施を検討中の場合は、具体的な検討状況を説明することが重要である。

0. はじめに

 日本のコーポレートガバナンス・コード(以下、「CGコード」という)は2015年に初めて導入され、2018年、2021年の2度の改訂が行われました。このCGコードの策定・改訂の動きによりコーポレートガバナンスの形式的な体制整備が進んだと評価される一方で、サステナビリティに関する取組みの促進、取締役会等の実効性向上や独立社外取締役の機能発揮、そして、企業と投資家との対話などに関する実質面での課題が指摘されています1 。
 このような実質面の課題に関連し、CGコードの特徴であるコンプライ・オア・エクスプレインについては、各企業がコーポレート・ガバナンスに関する報告書(以下、「CG報告書」という)において、各原則の遵守状況の説明を行いますが、昨今は「検討中」という説明が続くなどのコンプライ・オア・エクスプレインの形骸化を指摘する声もあります。こうした状況を鑑み、東京証券取引所(以下、「東証」という)では2023年3月に「建設的な対話に資する『エクスプレイン』のポイント・事例について」を公表し、エクスプレインの改善を呼びかけています。
 そこで本稿では、東証の要請を受けて日経225構成企業におけるエクスプレインの状況に変化があったのかを調査を行いました。その結果やエクスプレインのアップデート事例について、東証の要請ポイントや英国企業のエクスプレイン状況なども併せて紹介します。

1. コンプライ・オア・エクス">

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参考文献

  • 1 金融庁「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム『スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議』意見書(6)」(2023年4月26日)https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/statements_6.pdf
  • 2 スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(1)
  • 3  東京証券取引所 上場部, 「建設的な対話に資する『エクスプレイン』のポイント・事例について」(2023年3月31日,)p.2, https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/jr4eth0000004utt-att/jr4eth0000004vhh.pdf.
  • 4 FRC, “Review of Corporate Governance Reporting”(2022年11月)p6-7, https://media.frc.org.uk/documents/Review_of_Corporate_Governance_Reporting_2022.pdf. FRC, “Review of Corporate Governance Reporting”(2023年11月)p7, https://media.frc.org.uk/documents/Review_of_Corporate_Governance.pdf.
  • 5 FRC,” UK Corporate Governance Code 2024”(2024年1月)https://media.frc.org.uk/documents/UK_Corporate_Governance_Code_2024_kRCm5ss.pdf.
  • 6 29条の取締役会における会社のリスク管理および内部統制システムの有効性の意見表明とその監視・検証を含む、意見の根拠の説明に関する内容については、2026年1月1日以降に開始する会計年度に適用される。
  • 7 各年において最後に発行された報告書を調査。

Opinion Leader

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント

Junko Ozawa

内閣府にて少子高齢社会対策や経済財政政策に関する政府指針の策定のほか、統計調査や法改正業務等に従事の後、当社入社。現在は、主に指名・人財領域のリサーチを担当。東京工業大学大学院修了(社会工学専攻)。

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
アナリスト

Yuriko Maeda

東京大学大学院総合文化研究科修了。前職はメーカーの経営管理部門にて、社内におけるSDGs意識の醸成やダイバーシティ推進のための施策に携わる。当社では、コーポレートガバナンスの各領域に係る国内外のリサーチ業務に従事。

CORPORATE
STATEMENT

新しい未来へのストーリーを。

ひとりを輝かせることが、
企業を、社会を、そして世界を
輝かせることにつながる。
そう信じている、だから。
志ある企業が、未来にわたって輝き続けるための
持続可能な企業経営の、力となること。
それが、私たち HRガバナンス・リーダーズの
使命です。
ひとりひとりを、それぞれの組織を、強くし、
有機的につなぐ、
サステナビリティガバナンスで。
企業の新しい未来への、ストーリーを創る。
ビジョンを強く実行し続ける在りかたへと、
変えていく。
日本を動かし、世界を変えていく人たちの、力へ。
未来を生み出す力の、力へ。
アイデアと、経験と、知識と、情熱を、
その想いへと、全力で注ぎ込みながら。
ずっとずっと続く道をともに創り、歩み続けます。
一緒に地球を輝かせていく、
そう、仲間となって。