HRガバナンス・リーダーズ株式会社

 

変わりゆく中期経営計画(2026年版)

JPX日経400採用企業の中期経営計画が発するメッセージ

  • Corporate
    Governance
  • Nomination/HR
  • Compensation
  • Sustainability

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
パートナー

柏岡 隆夫

■ サマリー

企業価値向上のための戦略を示す中期経営計画(以下「中計」)における設定目標の傾向を把握するために、JPX日経400採用企業を対象に公表資料を基にした独自調査を昨年に引き続き今年も実施した。なお、参考までに、今年はTOPIX500採用企業、およびJPX日経400採用企業またはTOPIX500採用企業にHRGLクライアント企業を加えた約1,000社についても、調査対象企業とした。

調査項目は、ROEやROICなどの財務的価値に関連する目標に加え、資本コストや政策保有株式の売却方針などのほか、人的資本投資、GHG削減、従業員エンゲージメント、女性活躍推進などの将来財務的価値に関連する項目についても調査した。

JPX日経400採用企業における2026年に公表された中計では、ROEおよびROIC目標を開示する企業の割合(以下「開示割合」)とともに従業員エンゲージメント目標の開示割合が前年公表中計比で大幅増加した一方、政策保有株式の売却方針の開示割合は大幅に減少した。なお、ROEやROICの目標値と株主資本コストやWACC(加重平均資本コスト)の差分は前年と同様、3~4%程度であった。

財務的価値関連の目標の開示割合は、ROEは90%、ROICは47%。将来財務的価値関連の目標の開示割合は、GHG削減は61%、従業員エンゲージメントは37%、女性活躍推進は30%であった。

今回の調査結果は、2026年に公表された中計ではROEおよびROIC目標と従業員エンゲージメント目標の開示割合が再び増加に転じた点が大きな特徴である。なお、TOPIX500採用企業や上記約1,000社を対象とした調査結果においても概ね同様の傾向であったが、女性活躍推進目標の開示が減少するなどの差分も見られた。また、各調査項目の開示割合は、概ねJPX日経400>TOPIX500>約1,000社となり、JPX日経400採用企業は相対的に開示割合が高いことが確認できた。

目次

目次を閉じる

1.調査について

調査対象と調査方法
 昨年の調査に引き続き、JPX日経400採用企業を対象として、会社HPおよび適時開示資料を基に中計の公表状況を調査した。また、中計公表企業については以下に掲げる項目についても分析を実施した。なお、参考までに、今年は、TOPIX500採用企業、およびJPX日経400採用企業またはTOPIX500採用企業にHRGLクライアント企業を加えた約1000社についても、調査対象企業としている。

調査時点
■2026年6月30日時点公表中計まで反映
調査項目 (昨年と同様)
■中計の開始年度と終了年度(年度は当該年度開始時点の西暦を記載)
■中計期間にかかわる目標など
・ROE目標を開示する企業数と目標値
・ROIC目標を開示する企業数と目標値
・資本コストを開示する企業数と資本コスト水準
・政策保有株式の売却方針に言及する企業数
・人的資本投資額を掲げる企業数
・経営者報酬改定に言及する企業数
■中計期間にかかわらない目標など
・GHG(温室効果ガス)削減目標値を掲げる企業数
・従業員エンゲージメント指数の改善を掲げる企業数
・女性活躍推進にかかる目標値を掲げる企業数と管理職に占める女性目標値

 ROEやROICなど財務的価値に関連する目標に加え、資本コストや政策保有株式の売却方針などのコーポレート・ガバナンスの観点から注目されている内容や、GHG削減、従業員エンゲージメント、女性活躍推進などの将来財務的価値に関連する目標、更には人的資本投資額や経営者報酬改定についても時系列調査することで、経営戦略における優先度が高まっている項目を把握することを企図した。

2.調査結果(対象:JPX日経400)

 調査対象における中計公表企業は345社である。2025年と2026年に中計を公表した企業はそれぞれ100社、101社である。
 2026年公表中計と2025年公表中計との比較においては、ROEおよびROIC目標の開示割合とともに従業員エンゲージメント目標において開示割合が増加に転じた(昨年は減少傾向)。一方、政策保有株式の売却方針における開示割合は減少した。
 なお、ROEとROICの目標の平均値はそれぞれ10.8%、8.5%である。ちなみに、それぞれに対応する資本コストである株主資本コストとWACCの平均値は6.7%と5.6%であり、それぞれの差分は4.1%と2.9%であった(ROEとROICの目標値は対応する株主資本コスト、WACCに3~4%程度のマージンを上乗せした水準にて設定していると考えられる)。

図表1

JPX日経400採用企業調査 
出典:公表資料を基にHRガバナンス・リーダーズにて作成 

3.【ご参考】調査結果(対象:TOPIX500社)

 調査対象における中計公表企業は427社である。2025年と2026年に中計を公表した企業はそれぞれ118社、130社である。
 2026年公表中計と2025年公表中計との比較において、JPX日経400との差分は、女性活躍推進目標の開示割合が減少した点である。また、各調査項目 の開示割合はJPX日経400より低い結果となった。
 なお、ROEとROICの目標の平均値はそれぞれ11.1%、8.8%である。ちなみに、それぞれに対応する資本コストである株主資本コストとWACCの平均値は6.8%と5.6%であり、それぞれの差分は4.3%と3.2%であった。

図表2

全体調査 (TOPIX500) 
出典:公表資料を基にHRガバナンス・リーダーズにて作成 

4.【ご参考】調査結果(対象:約1000社)

 調査対象における中計公表企業は771社である。2025年と2026年に中計を公表した企業はそれぞれ218社、213社である。
 2026年公表中計と2025年公表中計との比較において、JPX日経400・TOPIX500との差分は、ROE目標の開示割合が微増にとどまった点である。また、各調査項目 の開示割合は人的資本投資額を除きTOPIX500より低い結果となった。
 なお、ROEとROICの目標の平均値はそれぞれ11.0%、8.9%である。ちなみに、それぞれに対応する資本コストである株主資本コストとWACCの平均値は6.7%と5.7%であり、それぞれの差分は4.3%と3.2%であった。

図表3

全体調査 (JPX日経400・TOPIX500採用企業を含む約1000社)
出典:公表資料を基にHRガバナンス・リーダーズにて作成 

5.おわりに

 コーポレートガバナンス・コードの制定以降、企業価値向上への意識が年々高まっている中、企業価値向上にかかる戦略を開示する媒体は複数あるが、本調査はその中でもオーソドックスな媒体である中計をターゲットとした調査である。
 今回の調査結果は、各項目の開示割合が概ね減少となった昨年とは異なるトレンドを示すものとなった。今回の調査結果からはROEやROIC目標など数値目標開示に対し積極姿勢に転じる企業のスタンスの変化が感じられた。なお、調査結果数値に表れない傾向としては、キャピタルアロケーション全体の考え方、株主還元施策、人的資本投資などについてページを割いて説明する企業が増えてきている印象を受けた。従業員エンゲージメント目標の開示割合が増えたことも、企業の人的資本投資に対する取組み姿勢の変化を示していると考えられる。
 2026年のコーポレートガバナンス・コード改訂においては、企業成長投資の促進の観点からキャピタルアロケーションにかかる記述が追加されたが、こうした動きも今後の企業の中計の内容に影響を与えていく可能性があると考えられ、今後の動向に引き続き注目していきたい。

Opinion Leader

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
パートナー

Takao Kashioka

三菱UFJ信託銀行に入社後、各種法人ビジネスを経験したのちに2015年より現業に従事。2015年以降に手掛けた累計PJ数は、200社以上。