HRガバナンス・リーダーズ株式会社

 

今求められる、経営チームの後継者計画

指名委員会における対応の現状と取組みのポイント

  • Corporate
    Governance
  • Nomination/HR
  • Compensation
  • Sustainability

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント

前田 祐梨子

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
マネージャー

大石 英翔

■ サマリー

「稼ぐ力」の強化のためには価値創造ストーリーを策定・実行する強靭な執行体制の組成が不可欠であり、そのためには社長・CEOだけでなく執行役員を含む経営チーム全体の後継者計画が肝要となる。本稿では、経営チーム全体の後継者計画について、特に指名委員会の役割に焦点を当てつつ、現状を確認し、今後進むべき方向性を提示する

HRガバナンス・リーダーズが実施しているコーポレートガバナンス・サーベイによると、社長・CEOに比べ、執行役・執行役員の後継者計画に関する取組みを実施する企業の割合が小さく、経営チーム全体の後継者計画については具体的な取組みの実施に遅れがみられる。一方、執行役・執行役員の後継者計画に関する取組みの実施割合は前年比で増加傾向にある

経営チームの後継者計画への指名委員会の関与方法には様々な可能性がある。たとえば、経済産業省の「指名委員会・報酬委員会及び後継者計画の活用に関する指針 ― コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針 (CGSガイドライン) 別冊 ―」が示している通り、指名委員会が①個別の選解任まで行うパターン、②社長・CEOに、候補者の選定方法や各候補者の選定理由の説明を求めるパターン、③何も関与しないなどが考えられる。これらを踏まえ、各社の状況に応じて最適な関与方法を採用する必要がある

後継者計画の立案・実施にあたっては、実施フェーズごとに取締役会、指名委員会、CEO・社長、人事部門などの各関係者が果たすべき役割を明確化し、共通認識としておくことが重要である

1.はじめに

1-1 「稼ぐ力」強化のカギとなる経営チーム強化の重要性

 コーポレートガバナンス・コードが策定された2015年以降、日本ではコーポレートガバナンス改革が進展し、多くの企業で監督機能の形式面での整備が進んできました。たとえば、2025年7月時点の東京証券取引所のプライム市場上場企業のうち、独立社外取締役を3分の1以上選任する企業は98.8%、任意の場合も含めて指名委員会を設置する企業は91.3%、報酬委員会を設置する企業は93.1%となっています¹。
 しかし、監督体制を外形的に整えるだけでは、企業の「稼ぐ力」を強化することにはつながりません。日本企業にとっての今後の課題は、中長期的な企業価値の向上というコーポレートガバナンス改革の本来の目的を見据え、コーポレートガバナンスの実効性を高めていくことであると考えます。2025年4月に経済産業省が公表した「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」(以下、「『稼ぐ力』のCGガイダンス」という。)²においても、コーポレートガバナンス・コードのコンプライが目的化し形式的な取組みにとどまっている企業が多い点が指摘されており、実効的なコーポレートガバナンスの構築による「稼ぐ力」の強化が求められています。
 実効的なコーポレートガバナンス構築のためには、執行体制の強化が一つのカギになると考えられます。企業の「稼ぐ力」の源泉は、あくまで価値創造ストー">

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参考文献

  • 1 株式会社東京証券取引所「東証上場会社における 独立社外取締役の選任状況 及び指名委員会・報酬委員会 の設置状況」(2025年7月18日)https://www.jpx.co.jp/equities/listing/ind-executive/nlsgeu000005va0p-att/mklp77000000c07i.pdf.
  • 2 経済産業省「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」(2025年4月30日)https://www.meti.go.jp/press/2025/04/20250430002/20250430002-3.pdf.
  • 3 同上
  • 4 CGサーベイの指名領域への参加企業数は237社。その内訳を上場市場区分別にみると、プライムが82.7%、スタンダードが7.2%、グロースが1.7%、未上場が8.4%である。
  • 5 経済産業省「指名委員会・報酬委員会及び後継者計画 の活用に関する指針 ― コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針 (CGSガイドライン) 別冊 ―」(2022年7月19日)https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/keizaihousei/pdf/cgs/separate_guideline2022.pdf.
  • 6 Shell, “Annual Report and Accounts for the year ended December 31, 2024”(2025年)https://www.shell.com/investors/results-and-reporting/annual-report/_jcr_content/root/main/section/promo/links/item0.stream/1752580693041/6c20b8111738b9a590ba145f0d1c4fa0e530dae0/shell-annual-report-2024.pdf.
  • 7 上級経営陣(Senior Management)には執行委員会(Executive Committee)およびカンパニーセクレタリーが含まれる。2025年11月現在、執行委員会メンバーは以下の通り。CEO、CFO、CHRO(最高人事責任者)、CLO(最高法務責任者)、上流担当プレジデント、統合ガス担当プレジデント、下流・再生可能・エネルギーソリューション担当プレジデント、プロジェクト・テクノロジー担当プレジデント、取引・供給担当プレジデント。Shell, “Executive Committee”(2025年11月7日アクセス)https://www.shell.com/who-we-are/leadership/executive-committee.html.
  • 8 Shell, “Annual Report and Accounts for the year ended December 31, 2024.”
  • 9 同上
  • 10 同社では、経営陣の後継者計画に関する事項は役員報酬を管掌する人事委員会にて審議している一方、取締役の後継者計画に関する事項ガバナンス・指名委員会(Governance and Nominating Committee)にて審議している。アメリカ企業では、経営陣の後継者計画を報酬委員会が、取締役の後継者計画を指名委員会が管掌するケースが多くみられる。
  • 11 Wells Fargo, “Notice of Annual Meeting and Proxy Statement 2025 Annual Meeting of Shareholders” (2025年) https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/72971/000007297125000090/wfc-20250317.htm#ia090c3a63a4141ea91f5e713fe80f187_121.
  • 12 同上
  • 13 同上

Opinion Leader

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
コンサルタント

Maeda Yuriko

東京大学大学院総合文化研究科修了。前職はメーカーの経営管理部門にて、社内におけるSDGs意識の醸成やダイバーシティ推進のための施策に携わる。当社では、コーポレートガバナンスの各領域に係る国内外のリサーチ業務に従事

HRガバナンス・リーダーズ株式会社
マネージャー

Hideto Oishi

運輸・レジャー系企業での IR 部門、宣伝部門の経験を経て、人材・販促サービス大手企業で人事(HRBP)として採用や要員計画策定、人材ポートフォリオを実現するためのポジションマネジメント/タレントマネジメントなど人材開発、組織開発に幅広く従事し現職に至る

CORPORATE
STATEMENT

新しい未来へのストーリーを。

ひとりを輝かせることが、
企業を、社会を、そして世界を
輝かせることにつながる。
そう信じている、だから。
志ある企業が、未来にわたって輝き続けるための
持続可能な企業経営の、力となること。
それが、私たち HRガバナンス・リーダーズの
使命です。
ひとりひとりを、それぞれの組織を、強くし、
有機的につなぐ、
サステナビリティガバナンスで。
企業の新しい未来への、ストーリーを創る。
ビジョンを強く実行し続ける在りかたへと、
変えていく。
日本を動かし、世界を変えていく人たちの、力へ。
未来を生み出す力の、力へ。
アイデアと、経験と、知識と、情熱を、
その想いへと、全力で注ぎ込みながら。
ずっとずっと続く道をともに創り、歩み続けます。
一緒に地球を輝かせていく、
そう、仲間となって。