今問われる、「稼ぐ力」の強化に向けた機関設計の在り方
稼ぐ力の強化に向けた機関設計変更のストーリーとメカニズム
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コーポレート
ガバナンス Corporate
Governance - 指名・人財 Nomination/HR
- 報酬 Compensation
- サステナビリティ Sustainability
HRガバナンス・リーダーズ株式会社
シニアコンサルタント
井之上 洋介
■ サマリー
本年4月30日に経済産業省より公表された「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」では、“現在の機関設計ありきではなく、「自社におけるCGの在り方」を実現するために最適な機関設計を選択することが望ましい”と言及されている。
昨今、プライム上場企業を中心に、最適な機関設計の検討・選択に向けた大きな動きが見られる一方で、その目的や狙い、機能、合意形成等に関して、社内関係者からの悩みや疑問が後を絶たず、検討が長期化するケースも散見される。
そこで、HRGLから「自社におけるCGの在り方」を踏まえた最適な機関設計の選択を成功に導くための重要事項として、①「稼ぐ力」の強化に向けたストーリー作り、②「稼ぐ力」の強化に向けたメカニズムの確立、及び③「稼ぐ力」の強化に向けた社内外への発信について次の通り提言する。
①ストーリー作り:経営トップの「本音」の目的・動機、思いを起点にCGのグランドデザインを描き、ストーリーの土台とする。
②メカニズムの確立:1.監督と執行の在り方及び取締役会の役割を言語化し、関係者間での理解と合意を形成する。2.指名委員会・報酬委員会の機能発揮のために、CGのグランドデザインと連動させて指名・報酬ガバナンスを検討し、社長・CEOの評価・再任/不再任プロセスを構築する。3.「委員会型」の機関設計を選択する場合は、内部監査部門を活用した組織監査への効果的な移行を実現する。
③社内外への発信:機関設計変更の背景、目的、ポイントを、ストーリー性をもって発信し、意図や目的の正しい理解を得て、社内外のステークホルダーとの信頼関係を醸成する。
1.「稼ぐ力」の強化に向けた機関設計の潮流とHRGL提言
1-1 機関設計の現在地・動向
本年4月30日に経済産業省より公表された「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」では、“現在の機関設計ありきではなく、「自社におけるCGの在り方」を実現するために最適な機関設計を選択することが望ましい”と言及されています。
同じく経済産業省より2022年7月19日に改訂版が公表された「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」においても、“自社のガバナンス体制は、企業により選択されるべきものであるが、(中略)、いずれのガバナンス体制をとるのか、それに適した機関設計はどれかについて、会社が自覚的に選択し、その理由について株主等のステークホルダーに説明できるようにすることが望ましい”とされています。
このような中、いわゆる「委員会型」の機関設計である監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社を選択するプライム上場企業の数は過半数に迫る勢いで増加しています。(図表1参照)
図表1
機関設計選択割合(東証プライム/一部) 出所:日本取引所グループ 「コーポレートガバナンス情報サービス」(2025年5月7日時点の情報)1-2 機関設計変更の目的・動機
Opinion Leaderオピニオン・リーダー
HRガバナンス・リーダーズ株式会社
シニアコンサルタント
井之上 洋介 Yosuke Inoue
