Interview
クライアントとの共創活動:T&Dホールディングス様
T&Dホールディングス、グループ経営理念の実現に向け
グループ10社の従業員を対象としたESOP信託を導入
― 挑戦とその裏側 ―
  
2024年時点における従業員向け株式交付制度(従業員向け持株制度を除く)の普及状況を見ると、米国S&P500のうち時価総額上位100社では74%、英国FTSE350の同上位100社では79%、ドイツのDAX40およびDAX100の上位40社でも60%と、グローバルでは制度の導入が広く進んでいます。一方で、TOPIX500のうち時価総額上位100社において従業員向け株式交付制度の導入を開示している企業は約31%にとどまり、海外主要企業との間に大きな差があるのが現状です。(出典➀)
  
こうした中、グローバルにおける人材獲得競争の激化や人的資本経営、自己株式の有効活用といった観点から、近年、日本企業でも従業員向け株式交付制度の導入に関する相談が増加しています。
  
このような背景のもと、T&D保険グループでは、2024年4月1日に迎えるグループ持株会社T&Dホールディングスの設立20周年を機に、同社および同社子会社計10社を対象とした大規模な従業員インセンティブ・プラン「株式付与ESOP信託」(以下「ESOP信託」)を導入しました。
  
本稿では、制度導入に至る背景や課題について、T&Dホールディングスのプロジェクトリーダー(当時)である今井氏、T&Dホールディングス担当の木村氏、グループ会社担当の吉村氏および福永氏、さらに本プロジェクトを支援したHRガバナンス・リーダーズ(以下、HRGL)の伊尾喜、安生とともに振り返り、今後の展望についても伺いました。

株式会社T&Dホールディングス
執行役員
今井 敏勝氏(写真左2番目)
人事総務部 人事課 課長代理
木村 隆浩氏(写真左3番目)
太陽生命保険株式会社
人事総務部 給与厚生課 課長代理
福永 博行氏(写真右2番目)
大同生命保険株式会社
人事総務部 部付部長
吉村 政昭氏(写真右3番目)
HRガバナンス・リーダーズ株式会社
マネージャー
伊尾喜 美希(写真左端)
シニアコンサルタント
安生 直史(写真右端)
※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです
従業員の会社業績や株価上昇への意識をより一層高めたい
―今回、大規模な従業員インセンティブ・プランとしてESOP信託を導入した背景と経緯について、お伺いさせてください
今井氏:
 
当ホールディングスでは、今回の株式交付制度導入に至る以前から、株式報酬に関する議論が幾度か行われてきました。その背景には、当社グループの成り立ちが大きく関係しています。
 
もともと、太陽生命および大同生命は相互会社という会社形態で運営されており、グループ会社の設立、ならびに上場を経て、初めて株式会社という形態を経験することとなりました。私自身、学生時代の同期と話す中で、上場企業で働く社員の多くが自社株式への意識を非常に強く持っていることに気づかされました。
一方で、当社グループでは設立から20周年を迎えるといっても従業員にとっては直接「株主」と接する機会は限られており、「株主」の存在が実感しづらいと感じていました。そうした中で、「何かできないだろうか」と思っていた折に、20周年を機とする株式交付制度導入の話が浮上したのです。
 
20周年という節目には、さまざまな取組みが実施されました。たとえば、グループとして初めてテレビコマーシャルを放映したり、世界的なゴルフトーナメント「マスターズ」への協賛を開始したりと、社外に向けたブランディング強化が図られました。また、サステナビリティの観点からは、文化・芸術の保全・継承を目的に、国立西洋美術館や東京ステーションギャラリー等への協賛を行うなど、文化芸術支援も行いました。
 
加えて、グループ内の一体感を高めるため、各グループ会社の関連部門同士が集まる懇親の場も設けるなど、社内の連携強化にも取組みました。そうした一連の施策の中で、「人事領域における象徴的な取組み」として位置づけたのが、今回のESOP信託の導入でした。
 
株式交付制度の検討については、今回導入以前より何度か浮上していましたが、様々な背景や制約から導入には至りませんでした。今回は、グループ設立20周年という節目を迎え、さらに従業員向け株式交付制度の導入事例も増加し、制度導入を後押しする環境が醸成されたことも、今回の導入機運を高めることになりました。また、当時の社長が「従業員が株式を保有することで、株式会社としての意識を根付かせたい」という強い想いを有していたこともあり、実現に至ったものと考えています。
 
その後は、ホールディングスが中心となり制度の素案を策定しながら、担当役員や社長と綿密に協議を重ねつつ、グループ各社とも適宜連携を図りながら導入に向けて具体的な検討を進めていきました。

T&Dホールディングス 今井 敏勝氏
―ホールディングス全体としてのプロジェクトの進め方と、グループ各社における展開と実務面でどのような課題があったか、お伺いさせてください
木村氏:
 
導入にあたっては、まず「どの株式交付制度を採用するか」というところから検討をスタートしました。複数の制度を比較する中で、広い対象者に付与できること、そして制度設計に柔軟性があることを重視し、最終的にESOP信託を導入候補に決定しました。
 
当初はスモールスタートを前提に、ホールディングスおよび生保3社の内務職員を対象に導入を検討していました。しかし、太陽生命および大同生命の両社長から「営業職員も含めたい」との意見を頂き、内務職員のみならず営業職員にまで対象者を拡大しました。
 
さらに、「グループ各社の従業員全体を対象とすべきではないか」という声も高まり、最終的には関連会社を含めたグループ全体への展開が視野に入るようになりました。
 
私自身にとっても、グループ全体をまたぐ制度導入は初めての経験であり、大きな挑戦でした。各社で制度や職種が異なる中、一本化された仕組みを導入するには、通常業務では関わる機会の少ない部門とも密接に連携を取る必要があり、調整の難しさと壁を実感するプロセスでもありました。
吉村氏:
 
私たちは、どちらかというとホールディングス側から“グループ全体で株式交付制度を導入したい”という提案を受ける立場でした。私自身は人事部門で内務職員の人事制度を所管しているのですが、今回の制度では営業職員も対象にしたいというお話がありました。
 
営業職員に関しては営業企画部が所管しており、内務職員とは規程や制度も長年別々に運用されてきました。さらに契約職員まで対象を拡大する検討もあり、関係者や範囲がどんどん広がっていく中での調整は非常に大変でした。
 
ちょうどその時期は、社会的にも“賃上げ”に注目が集まっていた頃です。そうした中で、『なぜ給与ではなく株式報酬を導入するのか』という制度の目的や意義を現場にしっかりと伝える必要があると感じていました。そのため、ホールディングスの森山社長より社員向けメッセージを発信したり、役員から動画メッセージを配信するなど、グループ全体で丁寧な周知活動を行いました。
 
私個人としても、グループを横断するプロジェクトに関わるのは初めてであり、新鮮な体験でもありました。特にホールディングスの子会社である当社は、株式交付規程などのESOP運営に必要な書類がひな形のままで使用できずに表現などを工夫する必要があった為、伊尾喜さんや安生さんと相談しながら、自社の状況に合った形でカスタマイズする作業は大変苦労しました。
木村氏:
 
ESOP信託導入の骨子自体は、ホールディングス側でほぼ固められた状態で各社に展開されたため、個社での導入にあたっては、既定の枠組みをもとに自社向けにカスタマイズする作業が中心となりました。その意味では、“導入の意思決定”そのもののハードルは高くありませんでした。
 
当社と大同生命にはすでに従業員持株会がありますが、今回導入されたESOP信託は、従来の持株会スキームとは異なるものでした。従業員が自ら希望して加入し、資金を拠出することで株主になる“持株会”に対し、ESOP信託は会社側から無償で株式が付与される仕組みです。結果として、この2つの制度が並行する形になりました。
 
正直なところ、既存の持株会スキームにESOP信託の枠組みを組み込んでしまった方がシンプルで制度導入や運用の事務負荷も少ないと感じたため、なぜそうしないのかという点については、ホールディングスと協議を重ねました。ちょうどグループ各社でも持株会の活性化に取り組んでいたタイミングだったため、無償で株式が付与されるESOP信託が導入されることで、“持株会をやめてしまおう”と考える従業員が出てくるのではという懸念もあり、当初は少なからず抵抗感もありました。
 
しかし最終的には、今回のESOP信託導入の主旨が“特定の層だけでなく、従業員全体に広く株式を付与する”ことにあることから、持株会とESOP信託が役割を分担しながら両輪として並行運用されることの意義を感じました。
-グループ各社からの持株会との併存に懸念の声がある一方、ESOP信託導入における一定の期待感もあるとお伺いしています。具体的にお伺いさせてください
木村氏:
 
私自身、今回のESOP信託導入により、既存の持株会との間に相乗効果が生まれるのではないかと感じています。持株会は基本的に個人の意思で加入する仕組みですが、私も加入者であるにもかかわらず、正直これまで株価に対して強い関心を持っていたとは言えませんでした。以前は、年に数回、はがきで保有株式数の通知が届く程度で、株価をリアルタイムに確認するようなことは特にしていませんでした。
 
しかし、今回のESOP信託導入にあたって新たにシステムを導入したことで、全従業員が自分の保有株式とともに、リアルタイムで株価を確認できるようになりました。これにより、株価への関心が高まり、『自分ももっと株式を持とう』『会社の成長に貢献しよう』という意識が醸成されるのではないかと考えています。
 
結果として、持株会への加入希望者が増える可能性もありますし、従業員一人ひとりの“株主意識”や“経営に対する当事者意識”が高まることで、組織全体として良い循環が生まれることを期待しています。

T&Dホールディングス 木村 隆浩氏
外部パートナーとの共創活動による新たな価値創出の「種」を見つけていきたい
-ESOP信託導入におけるパートナーとしてHRGLを選定いただいた理由についてお伺いさせてください
今井氏:
 
私は役員報酬制度も担当しています。役員向けのBIP信託はすでに導入しており、その支援をHRGLにお願いしているという経緯があり、HRGLには当グループの制度や背景を深くご理解いただいています。それが今回の選定における大きな決め手の一つとなりました。以前から面識があり、気軽に相談できる関係性が築かれていたことは理由の大きな一つだと考えています
 
今回導入したESOP信託は、従業員にとっても大きなメリットがありました。株式付与を行う際に通常必要となる証券口座の開設は手間がかかりますが、太陽生命や大同生命の持株会にすでに加入し、証券口座をお持ちの方であれば、その口座に直接振り込むことが可能です。新たな手続きを必要とせずに運用できる点は、従業員にとって大きな利便性となります。
 
一方で、特定譲渡制限付株式は別途証券口座を開設する必要があるなど、導入にあたってのハードルが比較的高くなります。その点、ESOP信託はより導入しやすい制度だと感じました。
 
また、伊尾喜さん、安生さんは、ESOP信託に関するメリットだけでなく、デメリットについても丁寧かつ正直に説明してくださり、信頼感を持って協働できるパートナーであると判断いたしました。
木村氏:
  常にお二人には伴走いただき、きめ細やかなご支援をいただきました。特に安生さんには、こちらの急なご連絡に対していつも快くご対応いただき、大変心強く感じておりました。迅速かつ柔軟なご対応には、心より感謝しております。
安生:
  そのようなお言葉をいただき、大変光栄に感じております。HRGLは、常に「黒子」としてクライアントの皆様を支えることに存在意義を見出しており、今回のご支援を通じて少しでもお力になれたことを心から嬉しく思っております。
吉村氏:
  実務的な面では、その場で即答できないことがあっても、必ずお持ち帰りいただき、しっかりと調査して誠実に対応していただきました。問題解決をその場で無理に乗り切ろうとせず、きちんと向き合い、慎重に対応していただけた点が非常に印象に残っています。そうした姿勢から、より安心して相談できると感じました。
福永氏:
  普段、人事部門としては営業部門との直接的な関わりが少ない中で、ホールディングスが中心となり、その取り纏めを行っておりました。営業部門からの質問に対しても、伊尾喜さん、安生さんは、常にしっかりと理解しようと努めていただき、的確に回答してくださいました。規程についても、個別企業に適用する際に整合性が取れない部分があった場合には、照会に対して、返答が遅れることなく、常にタイムリーな対応をしていただきました。そのような対応に、非常に感謝しています。

左から)HRGL 安生 直史、伊尾喜 美希
T&Dホールディングス 今井 敏勝氏、木村 隆浩氏
大同生命保険 吉村 政昭氏、太陽生命保険 福永 博行氏
-共創パートナーとして御社とHRGLでプロジェクトを推進していく中で、ポジティブな変化や反響等はございましたでしょうか
今井氏:
 
現在、世の中が急速に変化しています。特に人口減少により市場が縮小していく中で、他の金融業界では合併・再編等によって企業数が減少しているにもかかわらず、生命保険会社の数は減少するどころか、むしろ増加傾向にあります。そうした環境下では、各社間の競争がますます激化し、自社の力だけで物事を進めていくのは難しくなっていくと考えています。
 
そのような状況においては、自社単独で物事を考えるという閉鎖的な視点ではなく、多様な人との接点を持つことで、新たな価値創出の「種」を見出すことが非常に重要になってきます。そのためには、利害関係のない外部パートナーとの協働を通じて、視野を広げていくことが不可欠です。
 
今回、T&Dホールディングス担当の木村は、外部パートナーも含めた全社横断型の推進という、非常にチャレンジングな役割を担ってくれたと思います。その経験は確実に本人の成長に繋がったものと感じています。今後も、外部の皆様と連携した「共創」の取組みは、当社にとってますます重要なものになると考えております。
木村氏:
 
HRGLとの共創活動という観点では、毎週実施していたグループ内の検討部会に、伊尾喜さん、安生さんにも毎回ご参加いただきながら議論を進められた点が非常に有意義だったと感じています。お二人がその場にいらっしゃったことで、想定外の質問にも迅速に対応できましたし、判断が難しい問いに対しても、適切な観点を踏まえてその場で合意形成を行いながら、着実に前進することができました。
 
もしお二人のご参加がなければ、その場での対応が難しくなり、プロジェクトの進行に遅れが出ていた可能性もあったと思います。その意味でも、毎回の検討部会に継続的にご参画いただいたことは、プロジェクトをスケジュール通りに進めるうえで非常に重要な要素だったと考えています。
 
また、HRGLとの連携を通じて、問題解決の進め方やプロジェクトの運営手法について多くを学ぶことができ、自身の仕事の進め方にも良い刺激を受けました。加えて、グループ内での人的ネットワークも構築され、視野が広がったと実感しております。
-HRGLとしてプロジェクト推進の鍵はどこにあったと考えますか
伊尾喜:
 
検討部会への参加は、プロジェクト推進における重要な鍵であったと考えています。プロジェクトの初期段階では、「事務局ミーティング」という形で、今井さん、木村さん、安生、そして私の4名で骨子を固め、各社に対してお伺いすべき内容を丁寧に洗い出したうえで、検討部会へと臨む体制を構築できていたことは、スムーズな意思決定に大きく寄与しました。
 
関係者が多く、かつ限られた時間の中でプロジェクトを着実に進行させるためには、こうしたプロセスの整理と事前準備が不可欠であり、非常に重要な取組みであったと実感しています。
 
また、個人的に意識していたのは、ESOP信託の導入そのものがゴールではなく、その先の運用を見据えた制度設計することでした。特に、今回の導入規模は弊社として過去最大級である約1万6,000名を対象としたものであったため、できる限り運用上の負荷を軽減することを重視しておりました。
 
あわせて、制度導入の「目的」が関係者に正しく伝わり、浸透していくことも非常に重要だと考えており、安生とはこの点についても綿密に議論を重ね、認識のすり合わせを行ってまいりました。

HRGL 伊尾喜 美希
安生:
 
私自身も、今回のプロジェクトで検討部会に参加させていただいたことが、非常に大きな意義を持っていたと感じています。通常のプロジェクトでは、当社と事務局との間でやり取りを完結させるケースが多く、子会社との調整については事務局に委ねることが一般的です。
 
しかし、今回はプロジェクトの規模が大きく、かつ各社で事情が異なるという点を事前に伺っておりましたので、私自身が検討部会に参加させていただき、各社の声を直接お聞きする機会を持つこととしました。
 
特にピーク時には、週次で各社と密にコミュニケーションを取りながら、現在どのような課題や懸念を抱えているのかを丁寧に把握するよう努めました。その結果、共通するネックポイントや課題の傾向が見えてきて、全体最適に向けた対応が取りやすくなったと実感しています。
 
また、本プロジェクトを成功に導く上で鍵となった要素は二つあると考えています。第一に、制度導入にあたって規程の作成をはじめとする主要な工程のスケジュールを、一般的なケースよりも前倒しで設計したことです。これにより、想定外の事象にも余裕をもって対応することができました。
 
第二に、木村さんがコントロールタワーとして機能してくださり、各社からの照会を一元的に集約・整理してくださった点です。木村さんの方で一度内容を確認・仕分けいただいたうえで、必要な情報のみを当社に共有いただけたことで、非常にスピード感を持って、かつ的確に対応を進めることができました。

HRGL 安生 直史
持続的な成長に向けた、たゆまぬ努力を重ねたい
―今後の展望についてお伺いさせてください
吉村氏:
 
ESOP信託導入から約1年が経過しましたが、導入当初のタイミングで一定の情報発信を行ったこともあり、制度の目的については、従業員の理解はある程度得られていたと認識しています。しかしながら、導入から時間が経過した今、「株主意識」がどれほど高まっているかという点については、現時点ではまだ十分とは言い難く、徐々に浸透していくものだと捉えています。
 
近日中には、実際にポイントが付与されるタイミングが控えており、その際に改めて制度の趣旨・目的を丁寧に伝えていくことが重要だと考えています。個人的に、今回のESOP信託の特長は、役職や雇用形態、キャリアにかかわらず、すべての従業員に一律でポイントが付与されるという公平性にあると感じています。例えば、新入職員はもちろんのこと、(無期雇用であれば)契約職員や障がい者雇用の方であっても、グループに属している限り等しく対象となる制度設計となっており、株主意識の前に「自分はこのグループの一員である」という帰属意識の醸成につながるものだと確信しています。
 
成果や評価に基づく処遇ではなく、全員に等しく付与されるという本制度の特長は、さまざまな価値観やバックグラウンドをもつ人材が活躍する今の時代において、まさにDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の観点と合致していると考えます。今後は「成果で処遇する制度ではない」という制度の本質的な価値を、社内に向けて丁寧に伝えていくことが必要だと感じています。

大同生命保険 吉村 政昭氏
福永氏:
 
当グループでは、従業員エンゲージメント調査を定期的に実施しておりますが、今回の創立20周年を記念して実施した9つの施策に関して、「どの施策が良かったか」という観点で従業員への調査を行いました。その結果、ESOP信託の導入については、太陽生命において第6位という評価となりました。
 
この結果からも分かるように、本制度はその意義やメリットが日常の中で実感されにくいことから、現時点では十分に浸透しておらず、理解も限定的にとどまっていると感じています。とはいえ、制度の価値は時間をかけて徐々に理解・共有されていくものであり、今後の継続的な取組みによって、その意義がより広く認識されていくことが期待されます。
 
そのため、今後はグループ全体で一体的に取り組むべき課題として、ESOP信託の意義や具体的な活用方法について、より丁寧に伝えていく必要があると認識しています。制度の目的を発信し続けて、各社の従業員一人ひとりが「T&D保険グループの一員として重要な取組みである」と実感できるよう、継続的な意識醸成に努めてまいります。

太陽生命保険 福永 博行氏
木村氏:
 
私自身、ホールディングスに異動する以前は、日常業務の中で株価を意識する機会はあまりありませんでした。しかし現在では、自身の出身母体である企業の動向だけでなく、各社の業績等も気になるようになり、株価との関係性をより意識するようになっています。
 
今回のESOP信託導入を通じて、ホールディングスに直接所属していない従業員であっても、自分が属しているグループの価値や株価に対して関心を持つようになれば、非常に意義深いことだと感じています。そうした意識の変化が、グループ全体の一体感や中長期的な企業価値の向上にもつながっていくことを期待しています。
今井氏:
 
役員と従業員を切り離して個別に考えるのではなく、従業員の育成と適切な処遇を土台として、その先に役員層へとつながるキャリアパスを描いていくことが、企業の持続的成長には不可欠であると考えています。
 
今回のESOP信託導入により、その基盤となる仕組みが整ったと認識しております。当制度を活かし、更なる株主意識や経営参画意識の醸成に向け、私自身の中では次の検討を始めています。もちろん、新たな制度設計や導入にあたっては簡単に進められるものではありませんが、将来に向けて取り組むべき重要なテーマであると認識しております。今後とも、全社的な機運醸成を図り、中長期的な企業価値向上へとつなげていきたいと思います。

(左から)T&Dホールディングス 今井 敏勝氏、木村 隆浩氏
大同生命保険 吉村 政昭氏、太陽生命保険 福永 博行氏
―本日は大変お忙しい中、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました
出典➀:
【日本】2023年4月~2024年3月に決算期を迎えたTOPIX100構成企業 (2025/1末時点)
【米国】2024年1月~12月に決算期を迎えたS&P500構成企業のうち、2025年4月30日時点でプロキシーステートメントを公表済みであり、かつターゲット構成比を開示している時価総額上位100社(2025/1末時点)
【英国】2024年1月~12月に決算期を迎えたFTSE350構成企業のうち、2025年4月30日時点でアニュアルレポートを公表済みであり、かつターゲット構成比を開示している時価総額上位100社(2025/1末時点)
【ドイツ】2024年1月~12月に決算期を迎えたDAX40とHDAX100構成企業のうち、2025年4月30日時点でアニュアルレポートまたは報酬レポートを公表済みであり、かつターゲット構成比を開示している時価総額上位40社(2025/1末時点)
以上各社の公表資料を基にHRガバナンス・リーダーズにて作成